夏は心の鍵を 甘くするわ ご用心!
マジカル☆VIP!
弐:夏にご用心
導術兵の、ほぼ100%は、頭をつるりと剃りあげている。
これは、そのように僧侶のような頭でないと、
神秘の力を使う導術という技の、効果が減るからかと、思いきや、
そういう訳でも無いらしい。
つまり、幼年学校に入ったら、まず強制的に丸坊主にされるような、
一種のしきたりのようなものだと、今日、知った。
目の前にいる、導術神兵、は、
鮮やかで艶やかな髪が、あるのだから。
導術兵の、ほぼ100%は、額に、卵くらいの大きさの銀板を埋め込んでいる。
これは、他の導術兵と通信する際のアンテナのような役目をし、
どんな大きさの物でも、通信できれば、その大きさは問わない、と、思いきや、
そういう訳でも無いらしい。
つまり、通信能力というものは、結局は個人個人の力の差であり、
大きければ大きいほど、足りない力を補えるのだと、今日、知った。
目の前にいる、導術神兵、は、
小指の爪ぽっちの、銀の粒が、額にあるだけなのだから。
導術兵の、ほぼ100%は、導術教育校出身で、性別は男だ。
これは、まさか女は軍籍に置けないし、
特別な鍛錬を必要とする導術は、特別な教育が必要だからかと、思いきや、
そういう訳でも無いらしい。
つまり、特に導術の才のある者は、わざわざ学校など出ずとも、
通信だって索敵だって、最初から出来るものなのだと、今日、知った。
目の前にいる、導術神兵は、
軍に身を置く者特有の格式張ったにおいが無いし、
しかも、女なのだから。
夢なら、そんなに悪くないのに、
これが現実だと言うのだから、驚愕する!
******
たった今まで僕がいた、3階建ての第一本館は、2本の渡り廊下で繋がれ、
東側の1本目は、大小の講堂や会議室、応接室などのある第二本館へ、
西側の2本目は、将校の住まう官舎、下士官らの住まう兵舎へ、それぞれ続いている。
南方のどこだか言う国から、わざわざ取り寄せたという、
舶来の煉瓦が敷き詰められた、石畳の渡り廊下は、
民間企業に委託された庭設計で、四季折々の美しい緑が望め、
天気の良い今日などは、小鳥や蝶で、特に賑やかだ。
で、今。
何故、僕は、この美しい中庭を、
ご婦人を伴って眺めているのかと言う事!
「こちらの西廊下が、今後お住まいになります官舎に続いております、
既に部屋付きの兵が、お荷物の整理を終えている頃かと存じます」
僕を知る者は、きっと、今の僕の姿を見れば腹を抱えて笑うだろう。
まるで、皇都周遊の観光案内じゃないか。
心底、誤解しないで欲しいと思う。僕は、今はこんなだが、普段はそこそこの軍人なのだ。
「はい、存じています、お手数をおかけします」
初夏の美しい中庭を眺める、肩幅の狭い背中は、
たかだか中尉の僕に話すには、もったいないような敬語で答え、
それでもまだ、庭を眺めている。
これでやっと、その姿をまじまじと監視する機会を頂いた僕だった。
澄んだ瞳は、人の心を、見透かして、
透き通る声は、気持ちをころりと、変えさせて、
立ち姿は美しく、まるでスタアのプロマイド、
知識教養は当たり前、音楽文学お手の物。
先週末、名も知らぬ導術少年に聞いた話を反芻して、
あながち間違ってもいないと思う。
動揺して、一瞬しか合わせられなかった視線だったが、
その一瞬見合った瞳は、暗いところで見る、千早そっくりだった。
ラムネの中に入ったビー玉みたいに、光と心を見透かすようで。
まだ二言三言しか交わされていない言葉だったが、
その少しだけ聞いた声は、女性特有の、細くて柔らかい音だった。
オーケストラで聴く、きらきらの楽器みたいに、不思議と気持ちが舞い上がる。
女性をそんなにじろじろ見るのは失礼だから、
さっきから盗み見るように、伺っていた、その立ち姿だったが、
銀座のミルクホウルの看板娘より、店一番の花魁より、
うそだろう、先月部下と見に行った、舞台女優よりも、綺麗だなんて。
この短い時間で、知識教養の程は、知る事が敵わなかったが、
さも良家のお嬢様のような、丁寧な言葉遣い(まがりも何も軍籍!しかも下位の僕に対して!)が、
育ちの良さを物語っているような気がする。
もしもこの場に居なければ、お茶とかお琴とか、お稽古事に忙しそうな。
しかし、彼女の纏っているのは、
友禅の振袖では無いし、レース編みのドレスでも無い。
寸法のだいぶ大きな、僕と同じ、軍服だ。
そして、彼女の履歴書は、
良家のお嬢様では無いし、職業婦人の花形ことバスガイドでも無い。
<皇国>陸軍導術兵第11大隊第2中隊所属、僕と同じ、軍人だ。
軍に、女。しかも、導術兵で、少尉殿様。
気が小さくて、臆病で、小胆で、矮小な、僕には。
この現実、
ちょっと冗談キツすぎる。
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「護衛に就いて下さる少尉の方々と、
ご挨拶の予定があるそうなのですが、本日ですか?」
冗談のキツい現実に、自分を見失いかけていた僕に、
彼女(彼女!)は、丁寧すぎる言葉で質問を投げかけた。
彼女の背景を彩る、この美しい中庭が、
陸軍本営のものでなく、上野の料亭のものとかだったなら、
まるで僕は、お見合いでもしているのかと、錯覚しそうだった。
去年の冬、義兄に、そろそろ身を固めろと切に説かれたのを思い出す。
「はい、少佐殿。この後、お部屋にてお待ち下されば、
任を与りました少尉らが、お部屋に伺う予定であります。」
はい、少佐殿、と、返事する、僕の声は、自分の声なのに信じられない。
あなたご趣味は何ですか、はい、お茶とお花を少々、
そんな台詞の方が、この場には余程、似合うというもので、
もしも彼女が、友禅の振袖でも着て、僕が卸したての背広でも着て、
背後は上野の料亭で、目の前が綺麗な中庭で、
そんなだったら僕は、この渡り廊下を、もう、夜までだって案内したい気がする。
そこまで考えてふと気づく。
何を考えているんだ僕は。
冗談みたいな現実に、
少し心が当てられでもしているのだ。決まってる。
彼女は僕の上官で、
僕は貧乏くじの案内役で、
実家の義兄は身を固めろとううさくて、
この頃は色街へも御無沙汰で、
中庭は綺麗で、
彼女はもっと綺麗で。
「・・・・どうかなさいましたか」
一体、何秒くらい黙ってしまっていたのか、
覗き込む大きな瞳が、なぜか誰かに、似ているような気がして、
「は・・・・いえ、申し訳在りません!」
殊更に、目を逸らして、官舎までの廊下を急いだ。
******
2階のお部屋までご案内します、と、申し出はしたが、
お忙しい所もう充分にお手数を頂いておりますので、と、
こちらが恐縮するような返事で、丁重に遠慮された。
別に僕は、少佐様々なんかと比べれば、忙しくなんかは無かったけれど、
軍にありえないレヴェルの気遣いが、くすぐったくて、
更に案内を申し出るタイミングを逃してしまった。
本日はありがとうございました、と、
軽い会釈をして、官舎の門に去っていく、
軍服の似合わない、小さくて薄い体を見送りながら、
なぜ僕は、寂しいなどと思うんだ。
風邪気味の千早を見舞うため、獣舎へ向かう途中の道で、
やっと気がついた。
そうか、彼女は、
義姉に似ているんだ。
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人間たちは、冬服から夏服へと衣替えを終え、
獣たちは、冬毛から夏毛へと生え変わりを終える。
去年、何かの祭で貰った、
朝顔の模様の入った女ぶりの団扇で、
汗ばむ首筋に風を送る。
それでも日差しが暑いから、汗はなかなか引かなくて、
家族に会っていないから、馬鹿げた郷愁なんか沸くんだろう、
この夏は久しぶりに実家に帰ってやろうと、
うすらぼんやり考えた。
季節は初夏。
皇都の石畳を、陽炎が燃える。
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〜この豚モラトリアム中につき〜
サブタイトルが桜田淳子だということだけ言っておきたい。
皇国のさあ、ドリなんだけどさあ、これが2本目なのですが、実はさ、3本目のが、先に出来上がってたんだ。
んあ!どうゆう状況だ!と豚自身ですら疑問なのですが、つまりそういう事。反省しているということ!聞くな!
新城は、今後1番多く書きそうなので、ちょっと引張り気味に、恋愛フラグはまだ書きたくないです。
逆ハーは外堀を埋めてから。つまり次!次次!次のやつちょー書きたかった回なのまじアップ楽しみー!
私の心の青い鳥、こと、金森様だでよ!もー好き!すきすき!今ならこいけてっぺーよりすきかもしんねー!可哀相!
1本目の予告は嘘っぱちになってしまいましたが、ドエスの王子様は次々回に持ち越しです。
皇都の加藤鷹と、部活系童貞は、Wアップでその次に回します。逆ハーの何がめんどいって登場だよなー。
毎度毎度、何が楽しみって、サブタイ考えるのが一番楽しいんだよねー。次回、心の青い鳥が欲に溺れるという話。