ねずみ色に輝く アスファルトが
男たちの戦いを待っている


サーキットの娘




待ち合わせを、夕方にしておいて良かった。

デートにオシャレをして行くのは、ある意味礼儀だと思っている。
流行りのワンピースに揺れるタイプのピアス。荷物は少なくバッグは小さめに。
メイクはペディキュアまで怠らない。髪型もウィークデイより手を掛けて。

空がゆっくりとオレンジから紺色に染まりつつある、土曜の午後、5時、5分前。
は、約束していたロイエンタールとのデートのために、
待ち合わせ場所の、ショッピング街の入り口に立っている。
そこはの泊まるホテルから歩いて5分もかからない。
場所を決めたロイエンタールは、こんな所まで気を利かせてくれたのだろう。

今日の朝、あの祭りのようなクラブから帰ってきて、は泥のように眠ってしまった。
起きたのは午後になってから。そこで漸く、今日の予定を思い出したのだ。

昨日は相当、酒に酔ってしまった。
起きてシャワーを浴びてから、やっと反省に至る。
まさか、酒に任せたとはいえ、ビッテンフェルトとあんな事件を起こすとは。
次に会ったらビッテンフェルトに謝らなくては。

だが、ビッテンフェルトとのキスは、不思議と、嫌な思いはしなかった。

は思う。
先週の金曜の夜、ラインハルトが自分にキスをしたのも、こんな気分だったのだろうか。
酒に酔うと、キスをしたくなるのは、きっとこんな気持ちなのだろう。
今になって、解らなくも無い。

腕時計を見ると、時間は5時1分前を指している。
本日のお相手、ロイエンタールとは知り合ったばかりだし、
きっとこのデートは社交の意味なのだろう。情報交換のようなものだ。

それでも、デートに挑む時特有の、甘酸っぱい緊張で、は深呼吸をした。

土曜の街は混む。
ショッピングをする若者達、恋人達、親子連れ。
ロイエンタールを待つの近くにも、待ち合わせ顔の何人かが居て、
それぞれ時計を見たり、辺りを見回したり、携帯ヴィジを弄ったり、
人通りの多い5時の街は、暖かく華やいでいる。

すると急に、辺りの人の視線が、ある一点に集まった。

たくさんの路上駐車の間をぬって、一台の地上車が、停車したのだ。
傷一つ無い綺麗な黒塗り、スモーク掛かったウィンドウ、一目で解る高級車。
運転席から降り立った男は、さらに周りの視線を集めた。
上品な仕草、センスの良い服、身なりの良い長身は、
目の色が、左右色違いだったから。

「お待たせしました、閣下」

オスカー・フォン・ロイエンタールが、
わざわざ運転席から降り、彼を待つ少女のために、助手席のドアを開ける。
王女を護衛する騎士然とした面持ちで、芝居感たっぷりに礼をした。

「貴官の善闘に謝する。・・・・では、今日はよろしくおねがいしますね」

もそれに応じ、開けられたドアからエスコートを受けて乗り込んだ。




乗り心地の良い高級車は、行き先を告げずに走り出す。
だが、ロイエンタールのエスコートに定評を持たずにはいられないは、
映画であろうと食事であろうと、全面に信頼を置けていた。
それにしても、以前昼食を共にしたとき、今日とは別の車であったはず。
彼は一体、何台の車を所有しているのだろうか。
姓と名の間VONの3文字が入るという事を、は漸く理解した。
自分にもその3文字はついているけれど。

「晴れて良かったですね、夕焼けも綺麗だし、デート日和みたい」

「ええ、小官の願いが天に通じたようです。
 閣下との時間を、これほど楽しみにしていた男はおりませんから」

「ふふ、本当に、お上手だわ」

彼は普段から誰にでも、このような上手い口を聞くのだろうか。
諜報局に従事して、会話には百戦錬磨であるはずのまで、
ともすれば、本気にとってしまいそうになる。
照れで火照りそうになる自らを押さえ、は、
例えば世辞と社交飛び交う軍のパーティでそうするように、
上手い言葉を受け流す、オフィシャルな自分を維持した。

ふいには、ロイエンタールの前、ダッシュボードの影にくすんだ銀色を発見する。
それは、良く使い込まれたジッポだった。
見れば、目前のにある引き出すタイプの備え付け灰皿も、
少しだけ閉め忘れ、最近使った形跡が伺える。

「あの、煙草、遠慮しなくていいですよ?」

やっとここでは、ロイエンタールの素の一面を垣間見た。

「・・・・は?」

虚を衝かれたように少しだけ目を丸くして、驚く彼の顔は、
今まで見てきたロイエンタールの表情の中で、一番素直で、一番無防備に見えた。
そして意外に若くも見えた。
ビッテンフェルトといい彼といい、大人びた言葉や落ち着いた仕草で、
は正しい年齢を知らないが、予想年齢を少しばかり下げるべきなのかもしれない。

「煙草、吸うんですよね?ライターと、灰皿を使った跡があるから。
 私は吸わないですけど、人が吸う分には気になりませんよ」

少しだけ間を置いて、ロイエンタールが微笑んだ。
いたずらがばれて舌を出す少年のような、これも初めて見る表情だった。

「・・・・さすがとでも言うべきかな。閣下はやはり見抜いていらっしゃるか」

ではご寛容に感謝して失礼します、と言って、胸元から煙草を取り出し、
少しだけ窓を開けて、火をつけた。
紫煙を吐き出すその仕草は、やはり少年ではなく、大人だった。

「・・・・そして閣下は、一体いくら小官を悩ませれば気がお済みなのですか」

「え?本当に、煙草は気にしないですよ?」

「ほら、そのように。まるで小官の心を鷲掴んで玩ぶ子猫のようだ」

まったく彼は自分を棚に上げて。

「私のどこが玩んでるんですか、むしろそっちでしょう?」

ロイエンタールが微笑む。
灯る信号と、街明かりを反射して、青と黒の瞳が光った。

「小官が再三、お気遣いなくと申し上げているのにも関わらず、閣下ときたら。
 小官の心が焦がれて、黒こげてしまう所をご覧になりたいのでしょうか」

そういえば、敬語はいらないと過去に2度も言われた事を、は思い出した。
1度目は、最初に共にした昼食の場で、2度目は木曜の夜に電話で。
だが、思い出して気付く。
ロイエンタールには、なぜかを警戒させ、
ある程度の距離を置かせるような、不思議な空気があるのだ。
しかし、どんな空気があろうと、それは主観の問題だ。
せっかく歩み寄ってくれる相手を、無下に拒むのは、相手にとって失礼と言うもの。
ましてやプライベートで誘いを受けるなら、にも歩み寄る責任が生じるだろう。

「・・・・ご、ごめんね、忘れてた」

かなり努力をして楽な言葉を返したに、
ロイエンタールは満足そうな笑顔を送った。




予告していた通り、地上車は街の中心にある映画館に着いた。
最近できた、大型ショッピングモールと連携した新築のそこは、
大きなスクリーンと、居心地の良い席、行き届いたサービスに定評がある。

見たかった映画も、まずまずの出来だった。
地球時代の中世ヨーロッパ。
王女とその護衛隊長の、禁じられた身分違いの恋。
『臣はなぜこの世に生まれたのでしょう、陛下との恋が叶わぬと知りながら』
『それは予も同じこと。神は予に、どれほど試練を強いしたもうか』
予告カットにも使われたそのセリフを、は一字一句覚えてしまった。
期待通り、最後はお決まりのハッピーエンドで終わり、
数々の試練を乗り越え結ばれた二人が、キスをして終幕する。
エンドロールの間、不覚にも、頬に涙の伝うの隣で、
ロイエンタールは黙って、が落ち着くのを待っていてくれた。

映画館を出ると、空はすっかり暗くなり、時間は7時を過ぎていた。
未だ目の多少赤いに、落ち着きましたか、とロイエンタールは笑って、
優雅な運転の車は少し走って、奥まった小さなレストランで止まった。

前回の昼食でもそうだったが、ロイエンタールの行動範囲の広さと、
地理情報の緻密さに、は完敗を思う。
も、カフェやレストランの発掘は嫌いではないし、
オーディンの地理情報には多少の自信を持ってはいたが、
ロイエンタールと共に居ると、知らない場所がどんどん開けていく。

レストランに入ったとロイエンタールは、
当然のように、窓の見える二人掛けのボックス席に通された。恋人と思われたのだ。
窓からは絶景とは言え無いまでも、ささやかな夜景が望める。

「不覚ですな、私としたことが、店選びを間違えました」

「そんなことないよ?初めて入ったけど、素敵なお店」

「いえ・・・・ここで閣下に、僅かでも夜景をお見せしてしまったら、
 次にお誘い申し上げる口実が無くなってしまう、無念です」

本当に残念そうに言うその姿が、
の笑みと、そして鼓動の高鳴りを誘う。
まったくどれだけ饒舌なら気が済むのか彼は。

「ふふ、じゃあここで、こんな夜景では満足しないぞ、とか、言えばいい?」

饒舌に勝るものは、饒舌しかない。

「閣下の寛大な御心、必ずや御恩に報いてお見せに入れます」

王に跪く臣のような面持ちで、芝居がかって礼をされた。

ロイエンタールとは、今回オーディンに帰ってきてから知り合ったので、
まだ彼がどんな人物なのか、深くは知らない。
は今度、彼を知る者に彼について聞いてみようと思った。
きっと底知れなく女性にもてるのだろう、この言葉、この仕草。
もこれまで、プレイボーイと呼ばれる人種とは、幾人か知り合ったことはあったが、
それは皆、の職業でもある話術に、ままごとのように絡み取られるばかりだった。
だが彼はどうだ。
話の得意なをも怯ませる、ロイエンタールの話技巧。
これは本腰を入れてかからねば、うっかり摘み取られてしまうやもしれないと、
は場違いにも、前線に発つ武将のような気分になった。




先ほど仰られた命を、果たしてもよろしいでしょうか、と、
レストランを出て車に乗ったロイエンタールがに聞いた。
聞きつつも、車の進行方向は、帰り道の方では無い。
きっとこれは確認なのだろう、は笑ってそれを許可した。

停車したのは、内海に沿った広い公園だった。

右には首都オーディンの絢爛な光、
左には最近できたばかりの海上ショッピングタワーの光、
遠く対岸には、1週間前、の降り立った空港の光が見え、
真っ黒な海に、揺らいで反射している。
夏の夜であれば、恋人たちや観光客が集うこの場所も、
少し肌寒い今日のような春の夜は、たち以外には人影は見えなかった。

「綺麗だね・・・・17年オーディンにいるけど、ここに来たのは初めて」

海への手摺に近づいて、パノラマに広がる夜に感銘するの隣で、
ロイエンタールは微笑みながら、細い紫煙を昇華させた。

「それは良かった・・・・実は密かに憂えていたのです。
 閣下のような方は、この場所にはよくおいでになられたのではないかと」

「何で?あたしそこまで観光好きでもないよ?」

「・・・・そのお言葉は故意ですか?だとしたら、何とお憎きことか。心休まりませんね」

ロイエンタールの言動一つ一つに、心休まらないのはの方だ。
隣に立つ彼は、映画館の席より距離が近い。

「小官は、閣下が過去に、誰か良い人といらっしゃたのではないかと、
 そればかり考えて、心が焼ける想いだというのに」

「な、・・・・そんなのいないよ!」

「さて、本心は如何なものですかな・・・・過去も今も、
 銀色に輝くダイヤモンドというのは、人心を惹きつけてやまないものです」

銀色に、と言ったときに、彼は上手くに視線を合わせた。
は、不覚にも目を逸らしてしまった。
青と黒の瞳が、夜景よりも妖しく光って見えて。
心の手綱をしっかりと握らねば、簡単に言い包められそうだ。
視線を逸らしたの動揺を、はたして目の前の男は勘付いただろうか。

「ロイエンタールは、今までそうやって、たくさんの宝石を惑わせてきたんだ」

「・・・・と、申されますと?」

「ほんとに!口が上手いってこと!」

「はは、これは手厳しい。以後、肝に銘じておきますれば」

内海から吹き込む、少し強めの海風は、
の長い銀色の髪と、ロイエンタールの煙草の煙を、からかうように撫でていく。

牽制が効いたのだろうか、そのまま黙ってしまったロイエンタールに、
少し灸を据えすぎたかもしれない、せっかくの厚意で誘われたのに、
は、ロイエンタールに多少のフォローを振った。

「でも、今日は本当に楽しい。ロイエンタールはエスコート上手なんだ」

「お褒めに預かり、恐縮であります」

どこまで本心か解らないまでも、
フェザーンから帰ってきて色々な事件もあり、多少不安定だったの心を、
上質なエスコートと、巧みな言葉で、氷を溶かすように暖める。

「・・・・本当に、魔法みたい」

氷が溶けるように、暖まっていくの心。
ロイエンタールの魔法の呪文で、冬の心は春になる。

「魔法、でございますか」

「うん、ロイエンタールが、こんなに楽しくさせてくれるからね」

「・・・・魔法」

海風が銀色の前髪を躍らせて、の隣に立つロイエンタールの表情は見えない。
一言だけ、意味を確認するように呟いたのは、何を意味するところなのか。

「そういえば、映画もおもしろかったね、期待通りだった」

「閣下にご満足いただけた事の方が、小官には無量の喜びです」

「またそうやって!さっき肝に銘じるって言ったじゃない」

「銘じようにも本心なもので、口を塞ぐわけにも参りませんから」

辟易したように苦笑して見せる。
彼の本心とは一体、どこからどこまでなのか。

紫煙を立たせるロイエンタールが、
ふいに、も覚えた映画のセリフを呟いた。

但し、少しだけ間違って。

「・・・・小官はなぜこの世に生まれたのでしょう、閣下との恋が叶わぬと知りながら・・・・」

「それは予も同じこと。神は予に、どれほど試練を強いしたもうか・・・・だね。
 でも・・・・ちょっと違うよ?小官じゃなくて臣、閣下じゃなくて陛下」

青と黒の、夜景に勝る美しい輝きは、少し笑って、
今度は本当に、の視線を捕らえた。
逸らすことは叶わなかった。

笑顔が急に、真顔になったから。




「本当に、間違えたとお思いですか」




魔法使いは、手強い。




_________





自らの手綱を絡み取られる危険を感じて、は早々に、帰宅の意を表した。
手強い魔法使いは、笑顔でそれを受け入れ、のホテルまで車を走らせる。

帰りの車内でも、ロイエンタールが巧みに作り出す空気は、
の心を不安なものにはさせなかった。
絶妙な切り口からつかむ、会話の糸口、様々な話題、相槌の応酬。
先ほど、一瞬見せたあの真剣な瞳は、何だったのだろうか。
それを思い悩む間を持たせず、はここでも、彼の話術の技巧を思い知る。

土曜の夜ではあったが、時刻も真夜中近く、街は閑散とし、
ホテルの近くに停車したときも、エンジン音が響くほどだった。

「今日は、ありがとう、すごく楽しかった」

は笑顔で、本心から礼を述べた。
デートにお決まりの、次の約束なんかをして、
車を降りる事を、は予想していた。




だが、の予想は、不思議な展開で、裏切られたのだ。




がたんと音がして、突然、視界が転じる。

驚きで一瞬目を閉じてしまい、目を開けると、
灰色をした車の天井、

そして至近距離にある、
ロイエンタールの青と黒の瞳が見えた。

助手席のシートを倒されたのだと、そこで漸く気付いた。




「閣下、」




倒された助手席のシートに、
に覆い被さる体勢で、ロイエンタールが呼びかける。
至近距離で低く発せられるバリトンは、それでも企むような笑顔を醸していた。

「ロ、ロイエンタール、な、何するの」

今日のいつの時間より、今、二人の距離は近い。
緊張と動揺で、身を強張らせるに、
ロイエンタールはなお、落ち着いた口調で続ける。
2つの色の瞳の裏にある何かの思惟に、は疑問を隠せない。

「本日の小官の命遂行を、お褒め預かり恐縮にございますが、
 小官は一つ、閣下に褒章を請いたく存じます」

少しだけ煙草の匂いのするシャツ、バンドの太い腕時計。
を囲む腕と、胸は、逃げる隙を与えない。
大人と子供の、そして男と女の差というのは、こういう事を言うのだろうか。

「ほ・・・・褒章?」

近づいた身体は、触れてはいないが、体温を感じられそうだ。

「左様。・・・・まあ、褒章と申しますよりかは、火傷の薬と言った方が正しい」

「ど、どういう事なの?火傷?」

が問うと、ロイエンタールの身体が、一際近づいた。
鼻先が、もう少しで触れそうな程に。

「閣下の瞳は小官の心を燃やし、閣下の笑顔は小官の理性を焼き尽くす。
 ・・・・小官は、もう火傷に覆われ、死んでしまうやもしれません。
 ですから、閣下より火傷の薬を賜りたいのです」

「火傷の薬って・・・・どういう」

「閣下が一言、ヤーと仰って下されば、小官の傷も癒えますものを」

さあどうか、はい、と。
間近で囁いた、ロイエンタールの低い声。
やはり、彼はたちの悪い魔法使いなのかもしれない。
の口は、魔法にかかって、

「・・・・うん・・・・」




意識する間も、無かった。

「・・・・光栄の、極みにございます」




刹那、驚いて、目を閉じてしまった。




ロイエンタールが、の、唇を奪ったから。




_________





思えば、彼女の私服を見たのは初めてで、
車を停め、彼女を見つけた瞬間、不覚にも言葉を失ってしまった。

生まれてから今まで、女性は皆同じだと思っていた。
欲望を解消するためだけにある、男と対の、興味薄い生き物。

最初は、彼女に対してだってそれくらいの意識しか無かった。
同僚の、思い人。好敵手などになる気は更々無いが、
銀の瞳に銀の髪、美しい華を手折るのも一興と、興味本位で近づいた。
狙った獲物は逃したことは無いし、獲物自ら近寄ってくることもある自分。
高嶺の花に果敢に挑もうと、誰が咎めようか。

本当なら、もっと早くに花は手折られ、
やはり女とはこんなものなのだと、今頃新たに諦観しているはずだった。

しかしどうだろう。

この華は意外にも根深く、意外にも強かった。
再三の言葉にも乗らず、誘いも忘れる始末。
本来なら、自分の言葉や誘いに、胸をときめかせてくるはずが、
何故か、誘った自分の方が、彼女と出会うこと、彼女からの連絡に、
鼓動が高まるのは何の因果か。

彼女を乗せ運転する、自分の右半身が、妙に緊張した。
実は映画の内容を殆ど覚えていない。彼女の涙は記憶を消した。
夜景より、彼女が美しいと思った。女を美しく思うなんて。この自分が。

初めて会った日の晩、関係のあった女を全て切った。
理由は自分でも解らなかった。
ただ、思い出すのは、暖かく笑う銀色の瞳。
罪にまみれたこの青と黒の目に、銀の光が差し込んだ。

彼女を思うと、高鳴る鼓動、駆け上がる心拍数。




一体何なんだこれは!




きっと俺は、何か変な気にでも中てられたのだ。
珍しく落ちない華があるから、焦って躍起になっているに違いない。
この華を落とせば、この妙な感覚も完治するであろう。
まったく、女一人が、手をかける。

そう思って、ホテルの前に車を停め、敵への攻めを決意した、5分前。
彼女の座る助手席を強引に倒し、覆い被さる。
それでも送り狼呼ばわりは敵わないから、
火傷の薬、と口上だけは適当に取り繕った、2分前。

イエスの言葉を火蓋に、キスをした、1秒前。




なぜ、俺の鼓動は高鳴り続ける?




望みの華を落としたはずが。

唇から伝わる、ほの暖かい彼女の体温。
少しだけ触れる、腕と鼻先。
銀の睫毛と銀の髪。

この華奢な肩を、細い首筋を、
抱きしめたいと思う、この感情は、

何だ。




疑問を抱きつつ早鐘のように打つ心臓を無視して、
ロイエンタールの唇は、その浮名を伺わせるように、
の若く色づいた唇を蹂躙する。
蹂躙すればする程、華は手折ったことになるのに、
なぜかそれに反比例して、脈拍は速さを増す。
鼓動が邪魔で行為に集中できないのは、初めてだった。

ロイエンタールが、その唇の角度を、少しだけずらしたとき。




の華奢な両腕が、ロイエンタールの胸元を、押した。
数瞬を経て理解する、拒否の意味。拒まれたのも、初めてだった。
唇が離れて、少しだけ身体も距離をとる。
瞬間、猛烈な、寂しさに似た感情に襲われた。
これはまさか、切なさ、とでも言うのだろうか。

「・・・・や、やっぱり!」

が、唐突に話し出した。
ロイエンタールの、初めて見る表情で。

「やっぱり、男の人は、好きじゃなくてもキスできるって聞いたけど、」

彼女はぜんたい、何を言っているのか。

「でも!好きな人とした方が良いと思う!絶対!」

意図の汲み取れないロイエンタールを置いて、彼女は続ける。

「今回は、うんって言っちゃったあたしが悪かった、
 でも、ロイエンタールは、ちゃんと好きな人とキスした方が良い!」

言いながら彼女は倒された席を元に戻し、ドアを開けた。
走り出すように車外に出て、銀色の髪が月明かりに眩しい。

最後に、彼女は少しだけ振り向いた。




「今日は、魔法みたいに楽しかった、ありがとう、ロイエンタール・・・・准将」




ホテルのエントランスに駆けていく銀色の後姿が、
見えなくなってもその残像を、目が追った。

そのまま暫く、車を停めたまま、ロイエンタールは煙草の1本に火をつけた。




銀の瞳。
銀の髪。
鼓動は未だ収まらない。
唇が暖かい感触を覚えている。




「・・・・何だ、これは」




魔法使いは彼女の方だった。
彼女は、ロイエンタールに魔法をかけたから。




それは、恋という名の。




真夜中12時を過ぎても、この魔法は、解けない。










〜銀河後書き伝説〜返り討ち編〜

企画倒れ!万歳!ハイ、出る杭を打つ企画、見事失敗!割腹!
ちくしょ、何だこいつ、何でこんな強いの?加藤だから?加藤鷹だから?
「」の中書くたびに、おま、ちょ、それは言いすぎだろ何様のつもりなの実際、と呪詛していた。
あ、でもヒロインからは1歩遠ざかったし、出る杭は、打てた・・・・のか?あれ?

いや、自分で書いてるんだけどね、ロイにしゃべらす度に、こらー!おま、何て事を!とツッコみを禁じ得ない
最後の最後でロイをタメ語にしようかと思ったけど、無理だったよ。あいつ勝手だもん。ほっとこ

映画館は札幌のステラ、夜景は山下公園とお台場を参考に。
もっと手のこんだとこ連れてけや、とか思う人、挙手ーハイー。はーい。自ら
いんだよ!ベッタベタな展開が好きなの!パターンは王道だって誰かがゆってたっしょー?!

つーか何。何なのこの乱れた風紀は。ああ、これがウワサのビバリーヒルズ青春白書なの?
ヒロインチッス4人目。これでミュラーツブせばビンゴだよ。1列揃うよ。商品何?髭剃り

乱れまくった風紀を、更に乱すのが好きです。次回。