観用青年A 〜29歳 医師の場合〜
1:ろぼっと屋はなぜ潰れないのか?身近な疑問からはじめる恋愛学。
古今東西、坊主、神主、葬儀屋、火葬場。
人死に商売と言うものは、儲けに忙しく喰いっぱぐれが無い。
それは医師も同様だ。
盆も年始も休日も、人の命を預かって、走り回ってもう幾年。
人より稼ぎは良いものの、心身削って働いて。
買ったマンションは結婚に、諦め示す高級地。
たまの休みは午後起きで、無為無作為に終わってく。
。29歳、医師。
ぶっちゃけ、疲れてます。
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給料が出たので、いつもの事だが、一人寂しく自分へのご褒美。
銀座の、少し良い寿司屋で、大将に結婚しろ結婚しろとうるさく言われながら夕食。
結婚なんて、できる事ならしている。これ以上言い訳させないで欲しい。
同僚が1人転勤して、の肩に、今までの3倍の仕事が圧し掛かってきた。
これまでだって忙しかったのに、センターはを、過労死させるスンポーに違い無い。
散らかった家に帰って、泥のように眠って、今夜も、きっと気づいたら朝だ。
溜まりに溜まった洗濯物、洗い物、掃除だってしたいけれど、余裕が無い。
小さい頃に憧れた、優しかった小児科医も、こんな荒んだ生活だったのだろうか。
「結婚なんて高望みしないから、せめて、ドラえもんが欲しい・・・・」
秋の肌寒い空気に、薄ら白いため息が散った。
三越、松坂屋を通り過ぎて、新橋までの道を歩く。
明日は久々の、休日。
どうせ昼まで寝てしまうけれど、せめて今夜は、気分くらいは散歩がしたい。
午後10時の銀座の灯りは、給料日後の休日を祝うように、明るく光る。
ふと、信号待ちに足を止めた、の目に、一際目立つネオンが映った。
「高級観用ロボット専門店 スペリオーレ ENTER→」
きっと給料日後で浮かれていたのだ。
観用ロボットに、興味なんてこれっぽっちも無かったのに。
結婚はしたいけれど、できればロボットでなく人間が良いし、
至って健康の、まだ29歳だ、介護される年でもない。
だいたい観用ロボットなんて、金持ちの道楽だ。馬鹿げている。
それでもの足は、横断歩道とは逆方向の、細い横道に逸れて行った。
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「いらっしゃいませ、どのようなタイプをお探しでしょうか」
「え、いや、特に探している訳では無いんだけれど・・・・」
薄暗く雰囲気の良い照明とインテリアの施された、広い店内に、
たくさんの椅子が並べられ、青年、少女、少年、子供。
目を閉じた様々なタイプの観用ロボットが座らせられている。
営業職によくある、小奇麗なスーツの従業員が、営業用の笑顔でに向かった。
「最近ですと、女性のお客様でしたらこちらのタイプをお薦めしております、
料理上手で事務もできる、イライジャウードにそっくりでしょう、人気ですよ」
示された、白いシャツの観用青年は、値札が「¥1206,000」。出た給料の何倍だ。
長い睫毛が綺麗な顔だけれど、もう説明書を見る気にもなれない。
「こんな高級なのじゃなくて、もっと手頃なのが見たいんだけど」
買う気は無いけど、¥1206,000から目を逸らしたくて、それだけ答えた。
観用ロボットは、タイプ別に並べられている。
入り口からすぐの列には、一番メジャーな、若い女性型。
少し奥まった列に、男性型、その隣の列に子供型。
壁際には愛玩用の動物型が、それぞれ種類豊富に並べられているが、
性的に使われるセクサロイドが置かれていない事が、この店の品位を物語る。
そして店の一番奥。
キャッシャーの影に、隠されるように、その1体は置かれていたのだ。
「・・・・これは? 珍しいタイプに見えるけど・・・・」
見た目は、より年上だろうか。黒い髪に、高い鼻。でもオリエンタルでは無い。
店の全てのロボットに揃いの、白いシャツを着せられてはいるが、
値札が無い。説明書も、付いて無い。
何より一番、の目を引いたのは、
顔の、右半分を覆うように、白い仮面が被せられていた事だった。
観用ロボットの売りは、顔と性能。
何故、その重要部分に、わざわざ仮面を被せるのか。
シンプルだが意匠を凝らされた、ベネツィア細工らしい白い仮面は、
が昔、土産物で貰った絵葉書のそれと、よく似ていた。
「ああ、お客様、申し訳ございません、そちらは不良品の、しかも中古でして」
製作段階のトラブルで、ハードが傷ついてしまっていまして、
とてもお渡しできるものでは無いんですよ、現在修理待ちでございます。
申し訳なさそうな従業員の言葉は、左耳から右耳に抜けていく。
は何故か、その白い仮面から、目が離せなかった。
例えばエラーコインとか、レアな食玩とか、マニアックなピンズとか、
そういえば、何にせよ稀少なコレクターズアイテムは、かなり好きな方だったから。
「不良品て、どういう風に?性能に問題がある?」
従業員の言葉を聞かず、白い仮面に近づく。
姿勢良く座らせられたそれは、見た目には不良品とも思えない。
「いえ、うちの商品ですから、ソフト面に問題がある事はございません、
料理上手で、簡単な事務作業、電話応対、軽作業はもちろんのこと、
オペラを唄うオプションと、ピアノなど楽器演奏も出来ますが、
しかしハード面が・・・・保証書も付けられないほどでして」
「・・・・良いね、オペラは嫌いじゃないし、」
「・・・・お客様。申し訳ございませんが、ハード面はかなりの問題機です、
エラーしてからは、1度も起動させてませんので、性格も声も、解りませんし・・・・
失礼ですが、他をお薦めします、こちらなどいかがでしょうか、オペラならこちらでも、」
もう1度言う。
何にせよ、稀少なコレクターズアイテムは、かなり好きな方なのだ。
エラーコイン、食玩、ピンズ、その他プレミアム類。
それはもちろん、観用ロボットにしても。
「・・・・これにする、お会計、お願いします」
の言葉に、目を見開いた、従業員の表情が、普通に面白かった。
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値段はキッチリ8万だった。
給料日後の散財にしては、少々張り切ってしまったが、
これからの掃除、洗濯、料理など、家事の面がかなり楽になるだろうし、
観用青年用の服や靴、いろいろおまけも付けてもらった。高い買い物ではない。
自宅までお届けサービスの車に便乗させてもらって、
買ったばかりのマンションに着いた、午前0時。
今まで、ただいまを言っても暗い部屋の出迎えが待っていたが、
今後は彼が、お帰りと言って、夕食と共に出迎えてくれるのだろうか。
従業員に部屋の中まで運んでもらって、
とりあえず、リヴィングのソファに座らせた。
では、何かあったらお電話下さい、の、営業用の笑顔を見送って。
現在、午前1時。
は、付属の説明書を、開く。
『1)商品説明。
観用青年AL−2280型、タイプα、ヨツビシデンキ製。
料理上手(フレンチ)タイプ。簡単な事務作業・軽作業、電話応対など可能。
オペラを歌う、楽器演奏(ピアノ、フルートなど)のオプションは、標準装備。
ハードは、優しげな目が特徴の北欧人、声は柔らかめ、性格は穏やか。
身長188センチ、90キロ、靴のサイズ29センチ。ノンピアス。
装飾品を買う際は以上をご参考にお願いします。
2)起動方法。
観用青年の左手を、お客様の右手で握り、以下の言葉を話しかけて下さい。
「おはよう、私がマスターの、○○○○(フルネーム)です」
これで、観用青年が目を開き、設定された挨拶で、マスターに最初のお返事をします。
お客様の声が遠い場合、体温が低い場合など、起動しにくい事がありますが、
言葉を何度か繰返して下されば、起動します。
3)終了方法。
観用青年の右手を、お客様の左手で握り、以下の言葉を話しかけて下さい。
「おやすみ、私はマスターの、○○○○(フルネーム)です」
これで、観用青年が目を閉じ、設定された挨拶で、マスターに最後のお返事をします。
教養学習機能により、終了しても起動時のメモリは消去されません。
消去の際はヨツビシデンキお客様係までお問い合わせ下さい。
※この商品は中古品です。御了承下さい。』
もうこんな時間だし、起動は休日の明日にしようかとも思ったが、
貰ったプレゼントは、その場で開けたくなるのが、好奇心というものだ。
の周りにも、観用ロボットを持っている者は少なくない。
例えば、落ち込んだときに、優しく励ましてくれるだとか、
疲れているときに、おいしい夕食を作ってくれるとか、
今までは、そんな彼らの体験談を、特に気に留めず聞き流していたけれど、
いざ、自分が持つとなると、やはり楽しみに思ってしまう。
仕事で疲れたを、彼は優しく癒してくれるだろうか。
設定された最初の挨拶は、一体何と話すのか。
おはようございますマスター、これからよろしくマスター、ご用は何なりとマスター。
躍る心を落ち着けて、は、
白い仮面に隠れた瞳を観察しながら、
ゆっくりと、その左手を、握った。
「・・・・おはよう、私がマスターの、、です。」
ピ、と、小さな電子音が響いて。
仮面に隠れていない、顔左半分の、開かれた目は、綺麗な黒。
彫りの深い顔立ち、高い鼻、薄い唇と整った歯並び。
120万のイライジャウードには負けるけれど、
起動させてみれば、これはこれで、相当なモデリングだと思われる。
目を開いて、きっちり3秒。
まだナンバリングのみで、ニックネームの無い彼は、
自らが起動したことを確認するように、辺りを見回し、
最後に、左手を握った、の瞳を見返した。
おはようございますマスター、これからよろしくマスター、ご用は何なりとマスター。
彼の吐く最初の言葉は、どんなものか。声は、どんなものか。
合わさった視線に、は、過剰なまでの好奇心を託す。
しかし彼は。
その期待を、見事に裏切った。
「何だ、貴様。私を起動させるとは・・・・一体何を考えている」
さすがは不良品。
マスターにこの口の聞き方、心底嫌そうな表情、この態度。
その名に恥じない、見事な不良っぷりだ。
は、手を握ったまま、放す事もできず、とりあえず驚く。
従業員は、品質に自信が持てないと殊更不安がっていたが、
「・・・・まさか、これ程までとは・・・・」
あっけにとられて言ったに、見下すような冷たい視線が返された。
普通、観用青年とマスターの出会いは、笑顔で挨拶するものでは無いのか。
それを、事もあろうか、マスターを見下すなんて。
まったく呆れて、物が言えない。
ただし、オペラを唄うオプションがついているからか、
その声は、ものすごく綺麗な、良い声だったけれど。
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〜頭が悪い人、悪い人の話し方〜
良い例です。倫理的に尋常じゃないアレ企画、機関始動ようそろ!1発目は俄然オペラですが何か!殴るなら殴れ!さあ!
毎度毎度、企画打ち上げる際は、副題をパクったりパロったりするんですが、今回は本のタイトルです。殴れよ!さあ!
珍しく逆ハーでない、1出馬1ヒロインでピンピン恋愛を書いていこうと思って、ヒロインの個性、なるものに殴られている。
何人かヒロインを出した上で、読んで下さる方が、その中の1人にでも共感できれば良いな、なぞ!甘いわ!殴られろ!
今回はステレオタイプな「疲れたお姉さん〜負け犬〜」です。部屋とか超汚ねえ。しかも小金持ち。どうしようもない!
市場を絞るのは良い売り方だな、とか!非営利駄文のくせに!生意気な害虫だ!歯を食いしばれ!このクサレパンドール!
ロボットは、浦沢のプルートゥ、スピルバーグのA.I.、クランプのちょびっつなどを参考に。ちぃまじで萌えだよね。
このあと森薫のエマになって、今日の猫村さんになって、最終的にはトゥーハートのマルチになるんだと思います。堕ちていく・・・・。
オペラ未見の方でも、読めるように書きたかったのですが、やっぱり書けてない。クサレのクサレたるところです。
いつものように、ヒロインの外見は一切描写してません。性格も、大まかにしか書いてません。ご想像に丸投げします!殴れ!
しっかしメイドブームやっと去ったと思ったときにコレだもんね、常に人生、後手後手です。後乗りサイコー!フォー!
まじさあ、このクサレ害虫めも一人暮らしなんですが、夜中に一人で洗濯機回してるとき、本気結婚してーなって思うよな。
いや、結婚したところで夜中に洗濯機を回さなくなるかといったらそうじゃないですが、痛さのレベル違げーもんまじで。
あとさ、風邪ひいたときと、便所掃除してるときね。あれは相当クリティカルだ。かいしんのいちげき!がいちゅうをたおした!
小出し小出しの精神でいきたいと思います。次回、とりあえず逆ギレしてみようの会。