君はマーメイド!
act.24〜シジミ日記
七月三十日(木)晴れ
朝、セレター軍港へ。巡洋艦とオートジャイロについて話す。
今日も昭南はとくに暑い。内地と違い、梅雨のじめじめが無いだけ救いなり。
夜、屋台にて饅頭と果物を買って食べる。何とも不思議な味。うまい。
七月三十一日(金)曇り後晴れ
進展なし。心持、気分沈む。K少佐の「諦めるな」を思い出す。皮肉なり。
夜、ダンスホールに誘われるが、行かず。風流の道は、長く険しい。
夕食は炒め飯、スープ、香辛料の入った肉。内地の飯が恋しい。
故郷に絵葉書を書く。ムクゲと蘇鉄の絵、大変きれい。父母のよろこぶ顔が目に浮かぶ。
******
八月三日(月)晴れ、夜から雨
断り切れず夜、ダンスホールへ。大いに緊張する。
夜半、K少佐似の人物を発見、捕捉。しかし人違いの風。何かある。
ワイン少々飲む。酒は久しぶり。しかし酔ってはいられない。
******
八月六日(木)晴れ
尾栗少佐の案内で、巡洋艦「みらい」に乗艦。まだ混乱したまま。
戦艦に女が二人もいる。うち一人は記者。帝国海軍では考えられないこと。
みらいで夕食をいただく。肉の揚げ物、味噌の炒め物、スープ。量も味も大変良い。
夜みらい酒保あり。のどのスースーする煙草をもらってのむ。これはいまひとつ。
みらい士官室に泊まる。ベッドは寝心地良く快適。K少佐、記者と隣部屋。
八月七日(金)晴れ
K少佐、オートジャイロでトラックへ。緊張して見送る。待遇は客人のまま。
朝、ハムエッグス、パン。昼、うどん。夜、ライスカレー、サラダ。どれもうまい。
昨日頂いたアメリカのラムネを飲む。不思議な味。うまい。
夜酒保あり。尾栗少佐より缶入り飲み物1本、未来の菓子1個、配給。ありがたい。いまだ食べず。
深夜、角松少佐ら上陸。不安に思う。ほとんど眠らず。
八月八日(土)晴れ
今日はいろいろたくさんあった。
早朝、捕虜となるので、潔く自決しようかと思ったが、できず。
怖くて結局、踏みとどまってしまう。畜生、情けない。頭が痛くなる。
6時頃、記者、取材で来室。大変緊張し、しどろもどろ。胸がどきどきする。
朝、焼魚、煮物、味噌汁。昼、かきあげそば。夜、魚のフライ。
夕方バス。3、4人用で小さいが快適。リンスというのを使う。効果は不明。
みらいの軍服を借り、着る。格好は帝国海軍のものが良いが、丈夫で肌触り良。
夕食後、片桐記者の取材。風流の話をするが、うまくいかず。男女の道、訓練を要す。
記者に未来の雑誌「ファムファタール」「美的百花」「キレイ」を見せてもらう。
未来の女は大変薄着。はしたないと思う反面、少しうれしい。とんだダマヘルなり。
酒保あり。片桐記者より菓子2個、配給。もったいない待遇。1つだけ開け、食べる。うまい。
深夜、角松少佐ら帰還。ひどく憔悴。何も言えぬ。
八月九日(日)晴れ時々スコール
朝、焼き魚、きんぴら。昼、肉と野菜の炒め。夜、鶏肉の定食。みらいの食事は全て良。
片桐、両記者に「ディーブイディー」を見せてもらい、感想を聞かれる。総天然色。すばらしい。
夜酒保あり。尾栗三佐(今日から三佐と書く)より、菓子と飲み物配給。大待遇なり。
少佐は三佐、中佐は二佐、大佐は一佐。大尉はたぶん一尉。未来では津田一尉、となる。
角松二佐の回復まで特別行事無し。遺憾に思いながら目覚め待つ。
ほとんど一日中、記者と過ごす。兵学校の話やドイツの話などする。まだ緊張とけず。
話のうまかった戦友をうらやましく思う。まねをしてみるが上手くいかず。訓練を要す。
記録用のペン、インクの残部少だったが、記者より色つきの「ゲルインクペン」をもらう。
感謝の言葉を伝えたかったが、上手く言えず。良い言葉が出ない。緊張続いている模様。
万年筆より細い線の、きれいな色で、絵の具のようなり。明日からこのペンで書く。
みらいに乗艦し、記録を長々としてしまう傾向あり。注意。
八月十日(月)晴れ
午前、記者よりK少佐の話を聞く。少佐らしからぬ行動、発言に少々驚く。
やはり少佐は話が上手い。ウィンドイチリューの念。ウー苦手の汚名返上を心に誓う。
なぜか、東進丸での会話の意味を知られていた。顔から火が出る心地。どこで知れたかは不明。
夕方、角松二佐目覚める。梅津艦長と、艦橋にて会議。明日は二千五百の命を救う。気概に燃える。
夜酒保あり。尾栗三佐より菓子1個、配給。煙草をすすめられたが、遠慮する。煙草は苦手なり。
配給の菓子はどれももったいなくて開けられず。Vielen herzlichen Dank。喜び、例えようも無し。
夜、記者と話す。「ゲルインクペン」の礼するが、やはり上手く言えず。歯がゆい。
記者は英語に堪能。海軍軍人でも舌を巻く発音。しかし、ドイツ語は片言。
Mit dir kann ich immer glucklich sein、Das hat mir viel Spas gemacht、もちろん言えるはずも無し。
故郷、熊野について話す。一面のみかん畑の美しさを見せたい。懐かしく思う。葉書は届く頃なり。
それにしても、「ゲルインクペン」は字が下手に見える。
八月十一日(火)雲り
早朝より上陸。二千五百よりは大分少なかったが、百八十五名の命を救う。
短艇に乗るものの中に、コレスのYを発見。両者無言で手を握り合う。感無量なり。
死ぬことで成る殉国と、生きることで成る報國。まこと、感無量なり。
朝、ジャム入りのパン。昼、肉の炒め、うどん。夜、から揚げ、おひたし、果物。
みらいに乗り、良いものばかり頂いて、必要以上に元気精力が有り余っている。
不純な意味での、忍耐必死。こんなヘルボーイでは申し訳が立たない。気力に欠くるなかりしか。
夜、記者と話す。全て取材とはわかっていても、不思議と顔が笑う。
兵学校、候補生時代、趣味、ドイツ時代、ドイツ語、いろいろについて話す。
記者にドイツ語Toi toi toiを教える。教えるのは不得意。にわか教官、奮闘す。
未来の流行語「微妙」を習う。悪いとはっきり言えぬ時に使用。日本らしく奥ゆかしくて大変良い。
「アイポッド」で音楽を聴かせてもらう。未来の蓄音機、レコードにあらず。驚くばかり。
聴いた音楽は、あまり良作とは思えず「微妙」なり。
「ゲルインクペン」は書き味良いが、色鮮やかすぎ、目がカチカチする。また「微妙」。
八月十二日(水)曇り
一日行事無し。視察も立派な任務なりと、艦、人を見て過ごす。午後、艦上体育に参加。駆け足。
朝、焼き魚の定食。昼、中華炒め。夜、ビーフカツの定食。全てうまい。
今日覚えた言葉。「ジャージ、ティーシャツ」運動用作業着の一。艦上体育時、借りる。
「キャノン」精密カメラのこと。「ノートパソコン」写真と映画を見るための薄い機械。
「まじで」まことにの意。「プライベート」秘密の意。「メンソ」薄荷入り煙草。
他にもあったがいちいち意味を聞けず、多くは不明。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥なり。
夜、本日は記者、部屋に来ず。寂しく思う。何をしているのか。
部屋を訪れようとも思ったが、勇気出ず。男が夜、女の部屋に行くのは「まじで」「微妙」なり。
これを機に明日話すことを考えておく。
何が好きか。本は読むか。学校は出ているか。想う人はいるか。どんな男が好きか。後者二つは無。
一人部屋で鍛錬。腕立て八十、腹筋百六十。生徒時代から比べ、多少成績悪。
配給の菓子一つ開ける。米国製に見えるが、日本製なり。派手な色の袋。味はきわめて良。
原材料名、じゃがいも(遺伝子組み換えでない)。遺伝子とはDNAのことか。意味は不明。
本日2200、トラック入港。
八月十三日(木)曇りのち晴れ
情けなくも、一度命を永らえた身とて、司令部へ戻るのは身が引き締まる思いなり。
朝、片桐、両記者と共に甲板へ出、久々に潮風にあたる。
トラックの写真を撮る記者の満足げなこと、とても嬉しい。未来の女は陽光の下でもきれい。
昼、梅津艦長より上陸の旨、乗員のよろこびを見て、こちらも同じ気持ち。
食堂にてにわか講師として海軍レスの講和をする。いつの時代も男とは同じものなり。
「エスプレイとは海上戦闘の要訣と同じである。他艦に先駆けレスに突っ込み、サッと迅速に引き上げる。」
ほとんど多くはクラスの受け売りで終わる。乗員は実地にて学ぶべし。
のち、乗員より未来のエスプレイ論も拝聴する。未来の風流は大変に多種多様、驚く。
未来では、見合いでなく、想い合って結婚するのが普通。良き風潮と思うが、関門でもある。
記者は、だれか想う男
「・・・・津田さん、失礼します、です」
「ぅ、わ!」
******
ノックの音も聞こえぬほど、のめり込んで机に向かっていたらしい。
集中したり、緊張すると、周りが見えなくなってしまう、私の短所だ。
ドアの隙間、低い位置から顔を覗かせる彼女が、
すみません、お邪魔してしまいましたか、と、
申し訳無さそうな表情を作っていた。
そんな顔、する事無いのに。こんな、私のためなどに。
「いえ、大丈夫です、こちらこそ、取り乱してしまって申し訳ない」
まるで、それを隠すように、帳面を閉じる。
別に、後ろめたい訳じゃない。そんな訳ない。
記録は、何を書こうと軍機であり、見せるわけにはいかないだけで。
「良かった、先に上陸になったので、ご挨拶をと思って、」
彼女は、鮮やかな色の鞄を肩にかけて、綺麗な瞳で笑う。
兵員では無いけれど、彼女も、2ヶ月近く、艦の中に缶詰だったのだ。
上陸の嬉しさは、私にも解る。
でも。
「上陸・・・・そうですか、楽しんでいらして下さい」
少しだけ、腹が冷たくなるような気がするのは。
一体、何だ。
では、お先に失礼します、と、
柔らかく微笑んで、ドアを閉める、彼女の、後姿に。
「・・・・さん!」
「はい?」
「・・・・いえ、何でも、ありません、失礼いたしました・・・・」
言葉なんか、何1つ浮かばないのに、
口から、彼女の名前だけが、
切羽詰って飛び出した。
本当に、言葉なんか。
何1つだって無いのに。
ある訳無いのに。
色鮮やかな、彼女の空気だけを残し、
閉じられたドアの内側は、
私1人を置き去りにして、元の静寂を取り戻す。
さん。
言うべき言葉を捜せないまま、
もう1度だけ、心の中で、名を呼んだ。
******
・・・・
未来では、見合いでなく、想い合って結婚するのが普通。良き風潮と思うが、関門でもある。
記者は、だれか想う男たった今、記者、上陸前の挨拶に来室する。
腹が冷たくなる心地。なぜか手荒く寂しく思う。名前だけ呼んで、何も言えなかった。情けない。
さしあたっては、記者の上陸が、楽しきものになれば良し。それだけを願う。
記者の鞄は「ゲルインクペン」に似た色。この色が好きなのだろうか。
上陸先でも、会えればと思う。
![]()
〜お目が高い!後書きであります!〜
何つー体たらくだ!恥を知れ!貴様たちの猛省を促す!足を開け!歯を食いしばれ!
ドリで1度は見てみたい、津田が日記を書くところ、こんばんは、歌丸です。違うな。害虫です。むしろばい菌です。
1度はやってみたかった日記形式。まさか!こんな負け戦になるとは!足を開け!歯を食いしばれ!あざーす!
もうね、今回は津田が可愛ければぶっちゃけもう何でも良かったっつー話で。だべ?可愛ければ、良いべ?
このクサレサイトにおける津田の需要を考えたとき、可愛さ重視でしょ?津田は。全盛期のあややくらいで良い津田は。
ちなみに便所の需要はヘタレだと思います。ヘタレて。2年ぶりくらいに使ったわ。久々ー!元気してた?!
しかしドイツ語表記は文字化けがすごいね。しっかり表示できてるか不安であります草加さんワンワン!
二外ドイツ語とってた友達から借りパクったドイツ語教科書を参考に。使い方が合ってるのか。その辺は歯を食いしばれ!
てか今超やな予感してんだけど良い?この1作と次の1作で、津田ドリ最後になるかも。あーあーあー!歯を食いしばれ!
未来の情報を、色々間違って覚えているとこね、ぶっちゃけ見所。何様?ばい菌の分際で。歯を食いしばります。
日記の文体は資料参考。畜生覚えていろ、とか、ダマヘルなり、とか、まじ言ってるかんね。落ちるわ!
あ、何か後書き書き足りないな。追加したら更新記録に載せます。
次回、中年よ、大志を抱け。暑さにヤられたメガヌが大志を抱きます。歯を食いしばって書きます。