君はマーメイド!
act.17〜果て無の津波〜





意味が、解らない。




時空を超えた艦。
子供騙しの空想科学小説。
未来から来た人間。

そして、歴史を変えると言った、
草加少佐。




意味が、解らない。




******




ケタ外れの出力で電信を受けた受信機を、
草加少佐は、斧で、叩き割った。

どちからと言うと温厚で、落ち着いた人柄だったはずなのに、
あのダンスホールで、人違いの振りをした一件から、
何か人が変わってしまったのか。

裏切らないのは行動と、その結果だよ。

1ヶ月前のあの日、晴れた甲板で聞いた、たったその一言を、
声も、表情も、振り返った仕草すら、全て鮮明に記憶している。
彼のようになりたくて、彼に着いて行きたくて、
ただずっと、その後を追ってきたのに。

神ならぬ、人間だからだ!

まるで、人が違ってしまっている。
冴え渡る判断力を有し、海軍を愛し、部下を思い遣る、
目標として仰いで来た彼は、一体、どこに消えてしまったのか。




嘘臭いが、未来から来たとか言う2人も、まだ信用は出来ない。

強力な戦闘艦の副長であり、中佐、
草加少佐が、カドマツ、とか呼んでいた大柄な男は、
その体格や身のこなし、拳銃を保持していた事からも、
訓練された軍人であるらしい事は、想像に難くない。

何を考えているのか、怒ったような表情をしながらも、
波に揺れる艦上で、微動だにせず仁王立ちになっている。
軍人だとすれば、海軍かもしれない。

その隣に、彼、カドマツとは対照的に、帽子を目深に被った小柄な少年が、
艦が左右に揺れるたび、壁に手をついて、安定を求めている。

未だ一言も口を聞かないままだが、
声を聞かねば、その年齢すらも窺い知れない。
それにしても軍属にしては若すぎる。一体何のために乗船しているのか。
時折、草加少佐が、気遣うような視線で彼を見遣る。
船に慣れぬ小柄な少年。それを気遣う草加少佐。

本当に、意味が、解らない。




食料、物資と共に、欺瞞と不安を載せた東進丸は、
黒い海の上、星空の下を、きっちり10ノットの速度で進む。




草加少佐。

今あなたは、
何を考え、
何を思い、
何をしようとしているのですか。




薄暗い電信室の明りに、軍帽のつばで影が出来て、
その表情を、読み取ることは出来なかった。