フルーツ☆PUNCH!

1発目:キレイな苺が好っきやねん





お堅い文化誌の編集者さん、しかもや本社勤務のバリバリや、聞いとったから、
てっきり、キャリアの長いオッサンなんやと、勝手に思っとったら。

まさか、こんな、
キレーナオネーサンが出てくるとは。

初めまして、今日から取材させて頂きます、宜しくお願いします、
と、営業用の柔らかい笑みで名刺を差し出す、
高い声と、細い指と、綺麗な爪に、
公務員生活十数年、社交辞令の匠と謳われたこの俺が、珍しく戸惑った。
こんなキレイな女の子と話すのなんて、そういやいつぶりやろ。
仕事に来た記者さんに対して、女の子だなんて、失礼かもしれんけど、

「し・・・・嶋本、進次です。こちらこそ、宜しくお願いします、」

小さな紙片を受け取って、
とりあえず、それだけしか、
返せんかった。




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名前は、嶋本 進次です。
今年で三十路の扉を叩くことは、無視していますが事実です。
一応言っておきますが、独身です。ここ数年、彼女を作る暇がありませんでした。
年中フリーなのは、忙しい所為です。断じて、身長が理由では、ありません。
結婚には、それほど焦ってません。まだ29やし、公務員やし、遅すぎでもないと思います。

でも、彼女は欲しいので、それなりに努力はしています。

合コンでは、TシャツじゃなくYシャツを着て、小奇麗に見えるようにしています。
ヒゲは毎日剃ります。地道に貯金もしています。会話も割と、上手い方です。
背は低い方ですが、太ってもいないし、ハゲてもいません。車は国産ですが持ってます。

嶋本 進次、29歳。

運命の出会い、常時・募集中です。




******




「・・・・で、特救の日常や海難の様子を、連載するんですか、12ヶ月も、」

「ええ、できるだけ、お仕事の邪魔をしませんように取材させて頂きますので」

「や、邪魔とかでなく、その、こんな所を取材して、そんなおもろい記事なんて、出来るんかと、」

「そんな、御謙遜なさらず、企画段階から素敵な職場だとお聞きしておりますが」

「いや、おもろなかったら、ほら、打ち切りとか、あるんでしょう、大丈夫ですか」

「話題性は充分すぎると存じます、週明けから新人隊員さんもいらっしゃるという事ですし」

円滑な、社交辞令をそこまで交わして、
ああ、そうやった、来週からヒヨコの研修やった、それも取材されるんか。
と、他人事のように漸く思い出した。




テーブルの上には、
接待用に淹れられた、インスタントのコーヒー。
『週刊時報』の、先月号と、先々月号。
『密着レスキュー24時〜いのちを懸けたいのちの救助〜』と、打たれた企画書類。

それから、
港談社  
と、書かれたシンプルな名刺が1枚。

普段、俺が貰う名刺といえば、
美容師のやら、居酒屋のやら、飲み屋のオネーチャンのやらで、
そういえば、こういう名刺は久しく貰ってへんかった。
ゼネコンとか、アパレルとか、そんな一般企業に勤める、高校の同期なんかは、
もう自分の名刺なんかも、持っとるんやろうか。
俺は、名刺を持ってないから、ちょっとカッコつかんよな。
肩書きは、割と立派な方やと思うんやけどな。くそ。

「週明けから週3回くらいのペースで撮影とインタビュースタートになります、」

机を挟んで向かいに座る、『港談社  』は、
企画書のページを、俺によお見えるように開いて、解りやすい説明をしているが、
時折、細い指で、髪を耳にかける仕草、
そればかりが、俺の目に入って、




ごっついキレイや、と、思う。




生業というのは、その人の手に現れる。

目の前でページを捲る、白くて華奢な手指の、その爪は、
落ち着いた、品の良い色に、薄く色づいていて、
海中結索とか、フル装備で腕立てとか、ウェイト付けて素昇りとか、
やったことなんて無いんやろなあ、きっと。否、絶対。

丁寧に手入れされた手を見てから、ふと、自分の手に視線を移す。

高校出てから十数年、掴んだものと言えば、
ロープと、ボンベと、要救助者の手、それから副隊長の役職で。
細かい傷、日焼け、治っても治ってもすぐ出来て潰れる水ぶくれが、
うん、自分でも解っとるけど、あんま、キレイな手とは言い難いよな。

「新人隊の方々にインタビューさせて頂いたものは、来々月から後乗りする構成に、」

机の上に新しい紙が載せられて、
高くて柔らかい声が、暫定取材スケジュール8・9月分、を、説明する。

「今日から来週までの取材分は来月1発目で出ますから、合併号の巻頭特集という形で、」

柔らかい音の出る、何か楽器みたいな声やな、と、思ってから、
何やねんそのくっさい比喩。俺らしくもないわ、と、慌てて否定した。
俺なんぞ、来週から声帯ボロボロになる予定やちゅーに。楽器て。いいとこドラじゃ。ドラ声じゃ。
目の前の楽器のような声は、今日これからの取材について、続ける。
エンジン音の最中で怒鳴り合ったり、声がかれるまで説教したり、
したことなんて無いんやろうなあ、たぶん。否、確実に。




「・・・・あの、嶋本さん、何か御不明な点がございましたか、」

「え、あ!ああ、いや、了解しました、」




うっかり、
見とれて、
聞惚れて。

説明なんぞ、正直、よう聞いてへんかった。




「あ、では、そろそろ基地内の撮影をさせて頂いても、」

机の上に乗っていた、本や書類を纏めて、
立ち上がろうとした彼女の背後に、真田隊長が立っていて、
ああ、この後は隊長が基地内の紹介をするんやったと、
ぼんやりと耳に入ったことを思い出した。

何やねん俺。
シュザイとか、サツエーとか言われて、びびっとんのか。
ええ年こいた大人が。隊長も、ヒヨコも見るんやで、俺の一挙一動。
ここで緊張したりしとったら、それこそ阿呆みたいやん。

何やねん俺。
久々に女の子と喋ったからって、仕事やで、割り切れや。
営業用の笑顔作れ、模範的な公務員たれ、イチ社会人として。
ここで腰引けとったら、それこそ下に示しつかへんやん。




「あの、・・・・これから、宜しくお願い致します!」




マナーに則って、立ち上がって、挨拶をしたら、
やっと初めて、視線が合った。

「・・・・ええ、良い記事にできるよう、尽力させて頂きます」

柔らかな動作で会釈をした、彼女は。




何やねん。
キレイなんは。
手だけじゃあらへんやん。




******




嶋本 進次、29歳。独身。
今日から、生まれて初めての取材を受けます。
緊張はしてません。舞い上がってもいません。
大人です。公務員です。その辺は弁えてます。

しかし。
この、特救にあるまじき集中力の散漫は、何が原因ですか。




嶋本 進次、29歳。

いい年した大人なのに、貰った名刺から、目が、離せません。




    




〜ミーティングと名の付いた吊るし上げ、もとい、後書きじゃ!〜

ダーリン勘弁するだっちゃ!久々すぎる更新が新ジャンルしかも新企画て、どんだけおめーなめてんの!みたいなね!
体中の穴という穴から汗やらやらを流して治安維持する彼らに、もうzokkon−命っつ話で!シブがき最高だよね実際!
ジパの続きもんやら、銀英の続きもんでは、やったことのない書き方をしたくて、姉さん事件です、的なアレです。

アイキャッチ狙って1発目軍曹とかね!浅ましいにも程があるわな!帰れ!害虫!お前の住処は床下じゃ!あざーす!
軍曹、29歳、独身、趣味火サスと土ワイ。「ああ!DVD録画忘れたわ!あかん!もう崖や!犯人出てまうわ!」
みたいな妄想をするのが最近の日課の1つです。お母さん!脳の可哀相な害虫がいるよ!通報してあげて!
三十路の雄を、あたかも中坊のようなテンションで恋愛させるのが大好物です。墓碑銘はコレでお願いします石材店さん。

さて、次回は、レスキューマシンラブマシン!DOKI☆でUHA☆なヤマなしオチなしイミなしで、楽しくアレします!