こっちを向いてよハニー!



キューティーハニー!




カーテンの合間から差し込む陽光で、薄らと目を開けたとき、
もう時計は午前10時を少し過ぎた所を指し示していた。
長い艦旅と、ついた早々の酒宴はさすがに身体に疲れを齎したらしい。
よく眠って半覚醒した頭と、眠りすぎて少々腫れぼったい目元。
は長い銀髪を枕元のクリップで留めて、完覚醒のためにバスルームへ移動した。

お湯を張りながらバスタブに浸かっていると、緩々と目覚め始めた脳が、
昨日の出来事を思い出させてきた。




ラインハルトの、キス。




あれは一体なんだったのだろう。
挨拶代わりとは言っていたが、友達同士の挨拶なら、せめて額か頬ではないのか。
酔っていたとも言っていた。だが、自分はともかく、ラインハルトがあんな量で酔う訳が無い。
キルヒアイス共々、見かけによらず酒勢にはめっぽう強かったはずだ。
1年離れていただけで、名うてのプレイボーイにでもなったのだろうか。
帰り道で「姉上と友がいれば他には要らない」と言っていたから、それも考え難い。

幼い頃、ラインハルトが向かいの家に引っ越してきた時から、今まで。
キルヒアイスと一緒に、3人は男女の別無く、友達であったはずなのに、
この期に及んで、自分が「女性」に見えでもしたのだろうか。まさか!

色々と考えているうちに、お湯がバスタブから溢れそうになって、は焦って蛇口を捻る。
蛇口を掴む自分の腕を見て、その腕を掴んだラインハルトの手を思い出した。
小さい頃、3人で遊んだときの手は、色も形も大きさも、
自分と殆ど変わらなかったのに。

昨日、手首を掴んだ手の平は、大きく、骨ばっていて、力強かった。

「・・・・男の子、だったんだ」

声に出して呟くと、一連の出来事が、急にリアルになる。
何だか無性に悲しくなって、頭ごとお湯の中に沈んだ。




がバスルームから出ると、春の日に相応しい快晴が、窓一面に入り込んでいた。
その光に少し気分を回復され、この地で少なくとも2ヶ月間は生活するから、
足りない物の買出しに行かねばならない事、昨日の事は考えていても始まらない事と、
無理矢理気持ちを切り替えて、クローゼットを開けた。

「よし、今日は何を着ようかな」

ファッションと言うのは、こういう時に心の味方になってくれるのだと、初めて知った。




どうせ知り合いには誰にも会わないだうと高を括って、
細身のデニムにシンプルなシャツ、低めのミュールに殆どすっぴんという軽武装で、
は大通りのショッピングモールを闊歩する。
本人としては地味な装備で出てきたはずが、かえってシンプルなセンスの良さと、
生まれ持つ美しさが引き立てられてしまったようで、やはりすれ違う人はを振り返った。

買わなければいけないものが、膨大だったのでリストにしたが、
当然だが、リストに書き出したからと言って、その量が減るわけではない。
個人コンピューターに使うオーディン用の電力プラグに始まって、
長旅で切らせてしまったサプリメント、
予備の残数が残り少なかった生理用品、
ボトル熱帯魚のペットのための餌、
敏感肌用の低刺激ボディソープ、
軍へ1年分の資料提出のための圧縮チップ・・・・

リストは2枚にも及んで、今日1日で全て揃えられるか、
そしてその揃えたものを、果たして自分がホテルまで運べるのかと、
は、時間と腕力の2つの面で先行きを不安に感じた。
前に住んでた官舎の部屋が残っていれば、こんな手間は何一つ無かったはずなのに!
けち経理部!長旅で疲れているあたしの苦労も、少しは考えて!
毒づいた所で、昔の部屋が戻ってくるわけでも、経理部が心優しくなるわけでもない。

時計が4時を回った所で、ようやくの買い物は3分の2が終えようとしていた。

小休止のために立ち寄った、街の中心部に位置する広い緑地は、
土曜日の午後らしく、ボールで遊ぶ子供達、日向で語る老人達、
ボードやダンスの練習をする若者や、飲み物を売るカフェワゴンで、明るく賑わっている。
少し離れた木陰のベンチで休もうと、が足を向けると、

突然、右腕が軽くなった。

「!う、わっ・・・・」

買ったものをまとめて入れていたせいで、
3軒目で貰った店の紙袋の取っ手が、盛大に破れたのだ。
よく整備された芝生の上に、電気プラグだの、ボディソープだのが方々に散らばった。
生理用品の入った方の袋で無かったのが、不幸中の幸いか。

は芝生に膝をついて、各々を拾う。意外に遠くの方まで飛び散ったらしい。

すると不意に、




「大丈夫か?」




頭の上から、聞いた事の無い、でも良く澄んだバリトンが降って来た。




「あ、はい。大丈夫です」

顔を上げると、逆光に、オレンジ色の髪が眩しい、背の高い若い男が、
飛び散らばっていた熱帯魚の餌と、圧縮チップを持って、心配そうな顔をしていた。

「あのベンチに座るんだろう?運ぶのを手伝おう、拾い忘れはないか」

「いえ、ありがとうございます、でも一人で持てますから」

「だが・・・・袋の持ち手が破れているぞ?卿の力では持てんだろう」

が辞する暇も無く、男はがかなり苦労していた重たい袋を、片手で軽々と持ち上げて、
ついでに、左手に持っていた袋も取り上げて、大股でベンチに進んだ。
急ぎ足でが追い、男はベンチの端に荷物を置く。

「ごめんなさい、助かりました。実はちょっと苦戦していたんです」

「だろうな、卿のような細腕では、あれは重いだろう」

男は表情がコロコロ変わる。笑顔になると、子供のようにも見えた。同じ年くらいかな、は思った。
その笑顔が、の顔を見て、ふいに不思議そうな表情を作った。

「・・・・卿、どこかで会った事は無かったか?」

「は?」

「あ、いや!決して軟派な意味で言っているのではないぞ!
 前にどこかで知り合ったような気がするのだ」

知り合ったも何も。は年齢を予想する程で、全くの初対面なはずだ。

「いえ、あの、全くの初対め・・・・」

「判ったぞ!!!」

「はい?」




「卿は、
 雑誌のモデルだ!!!」




「・・・・え?」




何だそれは!




男は勝手に納得した様子で、先ほどの悪びれない笑顔に戻って、続ける。

「そうか!そうだそうだ、ちょっと前にミュラーが買ってきた雑誌だ!
 "彼女へ本気のプレゼント"のページに時計をつけた卿がいたな!」

ミュラーって誰よ!?そもそもどんな雑誌読んでるのよ!?今時ハウツー系!?

「そうか、俺が一方的に知っていたんだな」

いやいやいや、知りませんて。

「いや、何も言わなくても大丈夫だ!
 雑誌に載るような仕事をする者は、休日に声をかけられるのを良しとしないのだろう?
 俺はそんなにミーハーじゃないからな!」

記憶の中から誰何した時、雑誌のモデルが出てくるような者は、充分ミーハーだとは思う。
今までその手のスカウトマンに名刺を貰ったり「モデルさんですか」と尋ねられた事は、
多々あったのだが、ここまで豪勢な勘違いをしてくれた人も、初めてだった。
何より、話すその笑顔に全く悪意が無い事が、訂正するタイミングを躊躇わせる。




「そして、卿の家族は軍属だろう!」




「・・・・はあ?」




勘違いもここまで来れば、逆におもしろいかもしれない。

「いや、さっき拾った物の中に、電力プラグがあったからな。
 あれはオーディンの軍が推奨する型番だ」

「よく・・・・ご存知なんですね」

俺の推理力もなかなか捨てたもんじゃないな、と男が言ったのを聞いて、
はここで、訂正を完璧に諦めた。
明るく笑う彼の推理の才能を、ここで潰してしまうのも可哀相だろう。

首都に帰って来てから最初に知り合った、華々しい勘違いの明るい男に、
は少しだけ興味が沸いて、良かったら少しお話しませんかと、
ベンチでのアフタヌーンティーに男を招待した。

男はまた子供のように笑うと、ちょっと待っててくれと言って、一旦離れ、
カフェワゴンからコーヒーと、キャラメルラテを振舞ってくれた。優しい性格なのだろう。

木陰の一角に二人並んで腰を下ろす。
午後の暖かい春風が、少し長めのオレンジの髪と、背中を覆う銀髪を揺らして駆けて行く。
男はカスタマイズされたクラッシュデニムと、シンプルなシャツ、
シルバーバックルのベルトと、同じくシルバーの厳ついアクセサリーが、良く似合っている。
は、おしゃれな美しい金髪の友人を思い出し、彼はこういうのは着ないだろうなと、
思ったすぐさま、大いに後悔した。
何故今ラインハルトの事など思い出すのか!
ついでに昨日の事件まで引き出してしまって、

「ああ、俺は名前を言ってなかったな!卿の名も!」

彼の純朴な言葉に、沈みそうな気持ちを助けられた。

「え・・・・ええ、そうですね。私は、です」

「俺はフリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトだ。
 よろしくな、えーと・・・・フロイライン・?」

で結構ですよ、サー・ビッテンフェルト」

「そうか!良かった!俺も、敬語はいらんぞ、。俺の周りは、みんな俺を呼び捨てる」

「ふふ、ありがとう。みなさん気安いお友達なんです、だね」

少々強引に敬語を取り払う努力をする。
楽に話せと言う彼は、まるで子供同士が仲良くなりたいかのように、純真にそれを望んでいるのだろう。
好感の持てる青年だとは思った。

「そうかな、気安すぎるとたまに喧嘩になるぞ?
 さっき言ったミュラーなんかはな、すぐ俺の話を聞き流すんだ。
 そのくせ、俺が聞かないとすぐ不機嫌になる!困った奴らだ!」

ビッテンフェルトの言い様が純粋におかしくてが笑うと、
彼女が笑ったことが嬉しかったのか、ビッテンフェルトも微笑んだ。

「ビッテンフェルトの、ご家族も軍属?」

「?何故だ?」

「さっきあたしの家族の事、言い当てられ、ちゃったから。詳しいよね」

ごめん、本当はさっぱり当てられてないんだけどけど。
心の中で、はビッテンフェルトに謝りの表情を作る。
だが、その表情は、ビッテンフェルトの次に発せられた言葉で、急速に青冷めることになった。

「いや、俺の家族では無く、俺自身が軍属だ」




!何たる不覚!まさか同業だとは!




「"黒色槍騎兵"を知らないか?軍ではけっこう有名なんだがな、
 俺はそこの艦長なんだ!」

知らないも何も!仲の良い友達二人と同基地の、猛攻艦!しかも艦長!
昇進のときに、あたしはあなたの前科や履歴の非公開調査をしているじゃない!

意外な繋がりを発見してしまって。

「あ、あたし、もうそろそろ行かなきゃ」

勢い良くベンチから立ち上がり買い物袋を抱え込んだ。
門限という口実にもあまりにも嘘臭い時間帯ではあったが、嘘は自然と嘘を産む。
後ろめたい気持ちがの歩みを、普段の2倍の速さで進める。

「え、あ、もう、帰るのか?!」

弾かれた様に立ち上がって歩き出すに、驚いてビッテンフェルトが後を追う。
すぐに追いついて、重い袋を、全て奪い取るように抱えた。車で帰るのか?そこまで持とう。
別れ際まで純朴に優しいことが、更にのやましさを増殖させた。
大通りに出て手を挙げると、幸いすぐに車が停まった。

「ありがとうビッテンフェルト。今日は助かったし、楽しかった」

逃げるように乗り込みながらも、礼と言葉は忘れない。良い意味と悪い意味で、は社交が上手い。

「あ、ああ。・・・・あの、
 また!今度、会えるか?」

荷物を載せながら、はビッテンフェルトと目が合った。
否、ビッテンフェルトが、目を合わせた。
その目は、先刻まで少年の様に笑っていた目では無く、焦燥と寂しさを訴えている。

「うん、きっと、会えるよ」

心では真逆の事を思いながら、は笑顔を作る。上手く笑えたか、よく判らなかった。




エンジン音高らかに、車は急発進した。
人通りの多い大通りの石畳に、
振りかけた手をどうして良いか判らず、曖昧に握り締めるビッテンフェルトだけが残された。

銀の瞳。モデル。銀の髪。大荷物。。そういえば、歳も住まいも聞いていなかった。

高々30分も空間を共にしていなかったのに。




ビッテンフェルトの網膜に、鮮やかな銀色が、強く刻まれた。




__________





「卿!卿ら!!聞け!」

「・・・・入ってくるなりそれか。卿が騒々しいのはいつもの事だが、そのうち騒音公害に指定されるぞ」

「私が環境省長官なら今ここで指定しているんですがね、残念です」

「何だ?おもしろいニュースなら聞いてやらんでもない!」

「どうせまた下らぬ小噺だろう」

その日の夜、官舎に近い仕官優先の酒場"海鷲"に、ビッテンフェルトが押し入ると、
案の定、彼の同僚らワーレン、ミュラー、ミッターマイヤー、ロイエンタールが先着していた。
どの曜日でもこの時間帯には、誰か彼か必ずこの店に居て、上司の愚痴、小噺の披露、
仕事の相談、女性の話など、相手を見つけるには誰もがだいたいここに集まる。
早い話が、暇つぶしの溜まり場になっているのだ。
ワーレンとミッターマイヤーは軍服のままだった。どうやら休日勤務だったらしい。

「そう言うな!いや、今回は大ニュースだぞ!」

先鋒一団が座っていた、店の真中に位置する丸テーブルを囲む形のソファ席には、
もう半分以上無くなった酒瓶や、食い荒らされた料理が散乱している。
ビッテンフェルトは急遽1人分空けられた空間に座り、勝手にボトルの酒を注いだ。

「そう言っていつも滑りますよね?今回は大スクープなんでしょうね」

「失礼な奴だな卿は!聞け!特に、ロイエンタールは聞け!」

「は?何故俺」

「まあ聞いてやれロイエンタール、ボランティアという言葉を知っているだろう」

「どれ、ビッテンフェルト大佐様のありがたいお言葉を拝聴しますか」

ビッテンフェルトは注いだ酒を1度煽る様に全て空にして、恐る恐る口を開く。
居並ぶ4人の8つの瞳が、ある者は興味深く、ある者は仕方なく、彼を注視した。




「お、俺は・・・・恋を、したかもしれん」




グラスの氷がカランと鳴った。




「「・・・・はあ?」」

一呼吸置いて、面々は気が削がれたため息と、聞き流すようにグラスに酒を注いだ。
ミッターマイヤーだけが、大変深く共感したようで、未だ興味の瞳を輝かせている。

「な、何だその反応は!少しは興味を持ってくれても良いのではないか!
 同胞の一大事に、何をそんなに冷め切っている!」

「期待して損しましたよ、何だ、そんな事ですか」

「卿が恋でも何でもしようと、俺は惚気話を聞く気は無いからな」

「・・・・だから俺に話を聞けと言ったのか、単純な奴」

3人が一同に聞き損の体を見せる中、ミッターマイヤーだけがその興味に落ち着かない様子で、
身を乗り出して、ビッテンフェルトのグラスに酒を注いだ。

「いや!解るぞビッテンフェルト!恋というのは突然やってくるものなのだ!」

「解ってくれるかミッターマイヤー!卿は人間が深い!さすがだ!」

「で、どこの誰なのだ、卿の瞳を奪ったミューズは」

「それが・・・・」

ビッテンフェルトは酒を煽りつつ、この日の午後に出会った銀髪の女性について語った。
ミッターマイヤーだけでなく他の3人も、他の会話をしつつも耳を傾ける。
話し終わったビッテンフェルトにミッターマイヤーからの激が飛んだ。

「・・・・馬鹿か、卿は!いや、馬鹿だ、卿は!なぜそこで、連絡先の一つも聞かん!
 恋とは名将に挑む最前線のようなものなのだぞ?タイミングを逃すと艦隊壊滅の負け戦だ!
 先鋒を任されることの多い卿は、よく解ってるはずだろう!」

「・・・・タイミング、か、良く言う。自分は求婚まで7年もかかった癖に」

「ロ、ロイエンタールは黙っていてくれ!で、どうなんだ、次も会えそうか?」

「いや、それがわからんのだ・・・・次の休みも公園に立ち寄ってはみるが」

「それでこそ卿だ!恋とは自分らしく挑んでこそ!」

「慣れない花束とケーキで挑んで、自分らしくとはどの口だ」

「・・・・ロイエンタール、次は拳が飛ぶからな」

そこでミュラーが口を開いた。

「・・・・何か・・・・聞いたことがあるんですよね、という名前」

「何だミュラー?お前までこいつの調子を助長する気か、気が知れないな」

「いえ、そういう訳では無いのですが」

「俺の言ってる女性は、卿が買って来た雑誌のモデルだぞ?そこで見たんじゃないのか?」

「いや、そうではなくて・・・・あ、思い出しました。
 今の諜報局の副総監。たしか・フォン・だった気がします」

「はは!それは同姓同名だろう!俺も諜報には面識が無いが、
 副総監がそんなに若い女性なわけがない、きっと女性名のついた厳つい軍人だろうよ」

一同はミュラーの想像と、ミューズと同姓同名の厳つい軍人を想像して笑ったが、
ミュラーは何となく腑に落ちない気がした。諜報局は、あまり人前に出ない部門だし、
それに諜報という仕事柄、身分や職業を偽ってもおかしくは無いのではないか。
それでも座の話題は進み、ミュラーの懸念はすぐに雲散霧消してしまった。

「・・・・卿、銀髪の女性と言ったな?」

何本目かの煙草に火をつけながら、ロイエンタールがやっと本題に参加した。

「ああ、銀髪に銀の瞳の美しい女性だ、何だ?」

「俺は昨日の夜この店にいたのだが、それらしい女性を見なかった訳でもないんだ」

8つの色とりどりの瞳が、黒と青の瞳に一斉に向けられた。

「何!!卿!なぜそれを早く言わぬ!」

「ロイエンタール!少しはビッテンフェルトに協力してやれ!」

「・・・・だから今から協力するのだ。
 美しい女性だったから、声をかけようかとも思ったんだが、」

「なっ!それだけは止めてくれ!いや、で、声をかけたのか!?」

勝気な猛将ビッテンフェルトといえども、戦場ではともかくこの道に関しては、
浮名も名誉のロイエンタールに出てこられると、手も足も出ない。
それは場に居た一同も、同じ事を思ったようで、
ロイエンタールが敵手にになりかねないビッテンフェルトに、心の中で合掌した。

「いや、かけようと思ったんだが、同伴者がいてな」

「・・・・な、なんだ、良かった。そういえばご家族が軍属と言っていたしな」

露骨に安堵するビッテンフェルトに、
ロイエンタールは不敵な笑みを浮かべた。

「ご家族?恋人の間違いじゃないのか?」

「え?」




「同伴者は・・・・ラインハルト少将とキルヒアイス中佐だ」




一同は驚きの声をあげた。






喧騒も賑やかに"海鷲"の夜は更けていく。

時が進むにつれ、一人二人と客が引いていく中、
ビッテンフェルトとミュラーは最後まで残っていた。
ロイエンタールの情報に衝撃を受けたのであろうビッテンフェルトは、
普段の酒豪もどこへやら、赤い顔をして隣のミュラーに泣き言を吐き続けている。
先に帰った面々に残務処理(この場合ビッテンフェルトのことだ)を任されたミュラーは、
慰めたり叱咤激励したりしながら、ろれつも曖昧な先輩の話を、はいはいと聞いた。
仲の良い諸提督の間で、特に年下のミュラーはこういう役回りを押し付けられる事が多い。

「あんな、陶器人形みたいなのが恋人なんて・・・・俺は最初から負け戦ではないか・・・・」

「人間外見ではありませんよ。提督だって人形のように美しいとは言いませんが、
 猛将呼ばれていますし、顔も悪くない、格好良いではありませんか」

「・・・・猛将とは言っても任されるのは、たかだか艦艇1つではないか。
 ミッターマイヤーなどに比べて、俺だけ出世も遅いし・・・・」

「あの辺りは特別ですよ。提督だって同期では出世頭です。他はみんなまだ尉官ですよ」

「ロイエンタールのように機転が利いて、女にもてる訳でもないし・・・・」

「浮名を流すことだけが恋ではないでしょう。
 たくさんの虫が集う大輪の薔薇よりも、小さな野花の方が好きと言う蝶もいるかもしれません」

「だが、聞くがな卿、もしお前が女だったら、
 ・・・・俺とロイエンタール、どちらの男と交際する?ロイエンタールだろう?」

「それはもちろんビッテンフェルト提督ですよ!当たり前ではないですか」

励ましには多少の嘘も必要だ。本当はどちらも遠慮したいが。




不毛な問いに、不毛な励ましが重ねられ、
深夜を過ぎても、店の明かりが落とされることは無かった。









〜銀河後書き伝説〜疲労編〜

やっと1番好きキャラのビッテン書けたー!愛情空回ったー!切腹ー!だ、誰か、介錯を・・・・た、の、む。
「卿」を使った呼び方とか軍の肩書きとか昇進の順番とか、鬼難しいんだべさ。
「卿」はどの立場に使うん?「小官」と「私」の使い分けは?少将と准将どっちが妥当?知らんわそんなん!
ジークカイザーヨシキング(原作者)の緻密な設定ぶりを思い知りました。俺はムシケラさ!殺すなら殺せー!
そして前作で文体の模倣をしてみましたが即・断念。この話から徐々に文体自分に直してってる。
やっぱアレさね、他人の褌で勝負に挑むとね、負け戦やね。

低レベルな会話を書きたいときに、低レベルな脳味噌で書くと、こういう風になるってオチかな。この話。
ビッテンへの愛が炸裂したので質問回答もしてみました。100の質問とか、いつぶりやろ。恋って怖い

ビッテンフェルト好きへ妄想過多50問

妄想よりも犯罪に近いところで生きているんだよ。