キャンディ☆キャンパス
9時限目:ライアーランナー
私の質問で。
よもや、こんな展開になろうとは。
今日はありがとうございました、今後もよろしくお願いします。
いえ、こちらこそ、お世話になります。
何か変更点ございましたら、わたくしか草加の携帯の方に。
はい、ではお先に、失礼します。
あ、ではロビーまで、お見送りします。
いえいえ、ここで、結構ですから。
そんなありがちな社交が交わされたのが、3分前。
D会議室、通称D室で、商談相手を見送った私とは、
3分後の12時40分現在、
未だこの部屋で、企画の残りを打ち合わせている。
「・・・・頭は見開き1、が良いんじゃないか」
「でも、それだとイベントの詳細が伝わらないと思う」
会議用の長方形の机は、向かい側にも椅子はある。
それでも私は、の隣に座って話す。
資料が1部しか無いから、同じ方向に座らないと見難いだろう。
コピーでも何でもすれば良いのに、子供のような言い訳をして。
「能書きは他紙にもある、アイキャッチでとった方が良い」
目の前には先刻、取引先から受け取った色彩豊かなパンフレットと、
もっと先刻に、わざと1部だけコピーした白黒の企画資料が、広がっている。
2つの椅子の距離は、近い。
もし後ろから誰かが見たら、寄り添っているようにでも見えるだろうか。
2人だけの会議室。
私との声だけが響く。
「じゃあ次で、限定スーベニアのヤオヤ?」
「そうだ、ブツ撮りなら後でも間に合う、取材に余裕が出来るだろう」
「後手後手で大丈夫かな、先方お急ぎでしょ」
「どうせいっぴには出さないつもりなんだ、待たせれば良い」
強気だね、と言って、は笑った。
その言葉の冠詞には、一体何が来るのだろう。
いつもだけど今日は特に、強気だね。
それはそうだ。私は此の方、取引きに失敗した事が無い。
いつもは優しいのに、強気だね。
これはちょっと、夢を見過ぎか。
さすがは若手、強気だね。
同期の入社で、これは無いか。
わたし以外の人には、強気なんだね。
まさかな。
の笑顔に、笑顔を返して、打ち合わせは終わった。
ばれるはずが、無いと思う。
高校で、初めて滝に紹介されて、
に出会って10数年間。
私は世界一の嘘つきだ。
嘘も、言い訳も、口実も、
滑るように口から出てくる、この才能。
例えば、席が遠いとき、資料が見難いと言って隣に座る。
または、手に触れたいとき、時計を忘れたと言いその細い手首を掴む。
それから、まだ一緒に居たいとき、タクシーがつかまらないふりをする。
もう10と数年も、そんな嘘をつき通して、
他の誰より近い、まで10センチの距離を獲得した。
草加は人との距離が近い人、そう思われるに至ったのは、この才能の結果なのだ。
もっとも、滝や津田、如月には、かなり最初の方でばれてはいるが。
この才能は、きっとにしか効かないのだろう。
「、昼休み外に出ないか?次の企画の草案があるんだ」
世界一の嘘つきは、
世界一の屁理屈屋だ。
口実と解り易過ぎる誘いに、軽く乗ってくるに、
駅ビルに美味い多国籍料理屋があるから、連れて行きたかったんだ、とは、
口が滑らなかった。
世界一の嘘つきは、
世界一の屁理屈屋で、
きっと世界一、素直じゃない。
駅に直結するビルの、改札から1番遠い、奥まった1区画は、
飲食業には掻き入れ時の昼間だというのに、並ばずに席に付けた。
窓に面した2人用の席。
グルメの取材をした時に、こういう席はカップルシートと言う事を知った。
という事は、私と、が。
単なる店側の勘違いに、口元が緩むのを禁じえない。
そう銘打っているだけあって、メニューはやはり国籍を一貫しない。
生春巻き、タコスがあって、チョリソもあるが、パスタもある。
お互い目に付いたものを適当に注文して、最後に、
「それから、食後にタピオカパルフェ、ドリンクはジャスミン茶で」
注文を繰返してから店員が去ると、
目の前でが、怒ったような、笑ったような、不思議な表情で私を睨む。
でも解っているのだ、10余年も共にいれば、こんな表情の意味くらい。
「食べたそうだったから、代わりに注文してやったんだ」
「せっかく我慢してたのに、これから夏だからダイエットでしょ」
「が?これ以上どこを痩せる気だ、必要無い」
「どこをって訳じゃないけど、ダイエットは心意気だから」
「精神論か、成功しないな」
堪らず笑った表情が、窓から差し込む昼の光に透けて、
は、綺麗だ。
華奢な時計をつけた手首が、私と同じ人間かと思えるくらいに、細い。
ダイエットなんて必要無いのに。
テーブルに並んだ生春巻きやタコスを分け合いながら、
夏に流行するであろうビールの銘柄の話、
今年も水着は体型カバー型が主流である話、
近々封切のハリウッド映画の俳優が、お忍び来日する話。
はたしては気づいているだろうか。
ここへ誘う時に使った、次の企画の草案の話を、私がしないようにしている事に。
と2人のときは、出来るだけ仕事の話題にしたくない。
それに、今企画の話を伸ばしておけば、次回の口実にも使える。2つのメリットだ。
それでも話題が、やはり流行やニュースに向いてしまうのは、
私たちの中に記者が染み付いてしまっているせいだけれど。
仕事中のは、刑事にすら誘導尋問を仕掛ける猛者だが、
こういう時のは、私の発言に、おもしろいほど逸らされる。
にとって、私と共に居る今が、オフだという事を実感し、
「そう言えば、霞ヶ関のクールビズ、結局まだ意識は低いらしいな」
更にまた、新たな話題を飛ばした。
そして、食後にが、タピオカパルフェとジャスミン茶を、
私が、アイスプーアル茶を、それぞれ口にしている時。
話題が、妙な方向へ進んだ。
「あ、受付の智子ちゃんね、近々に寿退社だって」
受付の智子ちゃん、が誰なのか、判然としない。
たぶんのネットワークの中の1人だろう。
の友達、殊に見目の良いとされる受付の誰であっても、
以外はみんな同じ顔に見える、とまで言うと、言いすぎだろうか。
「そうか、智子さんが」
その顔が解らないまま、相槌を打つ。
「印刷部の河本さんが相手、お似合いの2人だよね」
印刷部の河本とは面識がある。明るく部下思いの、良い人間だ。
彼が選んだ、もしくは選ばれた、受付の智子ちゃんがどんな人なのか、
少しだけ見てみたい気もした。
「同期はどんどん寿退社だよ」
タピオカをスプーンに乗せながら、の言った言葉に、
受付の智子ちゃん、が同い年だという事を知った。
少子化と共に、女性の晩婚化が騒ぎ立てられる現在、
男女の婚姻平均年齢は、それでも5、6歳の差がある。
私は男だし、まだ、周りから適齢期と呼ばれる年齢には遠いが、
同年で女性のは、それなりに思う所もあるのだろうか。
「も、寿退社とか、そういう相手を探したりするのか?」
何の気無しに、他人事のように聞いた。
聞いてしまった。
私の質問で。
よもや、こんな展開になろうとは。
「うん、まあ、最近そういう男性、居ないわけじゃないんだけど」
損得計算の才能に恵まれた、世界一の嘘つき、世界一の屁理屈屋は、
今初めて、彼女の前で、呆然と素顔を晒してしまった。
の、寿退社に繋がるかも知れない、男性。
誰だ、それは!
「・・・・そう、か・・・・それは、初耳だな・・・・誰だ?」
表情を隠すように、プーアル茶のグラスに口をつけて、
今し方の動揺を、極力悟られないように、静かな声で聞く。
手の平が、激しく発汗していた。
その男、ハヤミさん、と言うらしい。
私も知っている大企業の、若くして重要ポスト。
と同い年で有名大学出、そんな職、背もそこそこ高いらしく、
昔風に言ういわゆる3高、エリートと言うやつだ。
つい1月前、取引先の繋がりで出会って、
まだ交際と言って良いのか、曖昧な関係らしいが。
「何か、情熱的なアプローチの方でね、でも優しいけど」
情熱的、は言い換えれば強引、と言う事だ。
その男は、どれだけに強気で近づいているのか。
先刻、会議室でに、強気だね、と言われた事を思い出した。
その冠詞にはやはり、わたし以外の人には、強気だね、が来るんだろう。
全くその通りだ。
手の平に握った汗すらも、無表情で隠し通したまま、私はの話を聞いている。
「別に、焦ってる訳じゃないんだけど、
智子ちゃんに触発されたのかも、やっぱり同期の結婚だし」
無意識のうちに、私はに、相槌と質問を投げていたらしいが、
芸能人の誰それに似ているとか、何度食事をしたとか、
の答えは、全く耳に届いていなかった。
昼休みは終わりに近づき、でもまだ本格的に交際って訳じゃないから、と、
が笑って話を閉じた顔を、珍しく、直視できなかった。
やはりにだって、この歳になるまで、
恋人と呼ばれる人の何人かはいた。
それは私や滝、津田、如月にも言える事で、
に誰か特定の人ができる度、
自らの気持ちに見切りをつけようと、自分も特定の存在を作り、
(しかし誰もが、急遽作った恋人が、似だったりするから笑うが)
の身が自由になる度、
自分にもチャンスが回ってきたと、諦め悪くその美しい瞳を追う。
そんな堂々巡りの10余年。
それでも、留学したあたりから、私もその他も、ある程度を妥協し始めた。
に人気があるのは仕方ない。
恋人が出来るのもこの際、涙を呑んで許可する。
要は最終的に、の、人生の隣に立てる存在になれれば勝ちなのだ。
そう妥協点を見出してから、
無情にも時は過ぎ。
安心しては、いられなくなった。
が、適齢期と呼ばれる年齢になってしまったのだ!
過去に何度も涙を呑んで、許してきた恋人と言う存在。
それが、これからは、もしかすると。
の人生の隣に立ってしまうかも知れないのか。
会社への帰り道、駅のコンコースは、花と緑で整備され、
陽の光を受け、の艶やかな髪は、綺麗だ。
ハヤミさん、とかいう男は、もうこの髪に触れたのだろうか。
、そんな男について行くな。
10余年も、こんなに近くに、ずっと私が居たじゃないか。
私は滝より気が利くし、津田より頼れて、如月より優しいぞ。
背もまあまあだし、顔も悪く無い、と思っている。
社内からは出世株とだって呼ばれているんだ。知っているだろう。
、私の存在を、見ろ。
世界一、素直じゃない私は、
「待て、髪に、花びらがついている、とってやるから」
ハヤミさん、が触れたかも知れない、
その細くしなやかな髪に、触れた。
ありがとうと、微笑む笑顔は、
いつか誰かのものになってしまうのだろうか。
嫌がらせのように照る、初夏の太陽。
ビルとビルの間に、薄い陽炎が、燃えた。
![]()
〜後書きラブストーリー〜
オッス!オラ害虫!妄想という名の痰ツボに生きる害虫は今日も元気に緑色のゲロです!爽やか!
創作?止めねーよ?絵?排泄するよ?ロマンチック?止まらねーよ?日記無くなった分後書きはスパークさ!
人間辞めますか、それとも二次元辞めますか。人間辞めてやらぁぁぁぁ!!!!あ、もう人じゃなくて害虫でした。手遅れ!
そして後書きと共に草加もスパーク!ブッ込め嘘つき!ライアーランナーで爆風スランプ気取っちゃいな!走る走る!
この草加の回で、逆ハメンバーだいたい出馬、展開のワンパ化を阻止するため新手の黒馬入りまーす!よろこんでー!白木屋!
沈艦から微笑みの貴公子、速水様。これで馬のケツに火がついて右往左往な展開になれば良い。見切り発車!テンション最高!
てかもうこれ9作目なのに、未だに草加たちの年齢を出せてない。幾つだ。適齢期、とか書いて鬼焦りした。あんま年上でもな。
このまま曖昧にはぐらかして想像に委ねる手段とりたかったんですがそうは問屋が卸しませんね。問屋?どこ?うち仲買いだったの?
それから草加たちの会社の場所も曖昧だ。コンコースとか書いちゃって、でも大崎じゃ嫌なんだよな。鬼焦りしています。
できれば山手線の内側で、できるだけ皇居に近い所が良いのに。え?何でって?そりゃ滝が恵比寿在住設定だからだよ。
滝!セレブじゃん!でも朝のラッシュに揉まれて人生の厳しさ知ると良いじゃん!基本、どサド。テンション最高!今!
津田、如月、草加の住まいの設定も、後々必要になりそうなので早く決めたいのに。会社の場所、どこよ?
津田は毎朝チャリで1時間(NOT原チャ)にしたいので、護国寺とか、山手線内側のローカルラインあたりで。
草加は津田んちの近く、でも乗り換えの多い駅、しかも朝は下り線。如月はフリーなので会社からは遠く、でも便利駅。
あー!もー!どこだよ!会社!建てろ!ゼネコン!何かイイ感じのビルを!談合しろ!危険だなこのネタやめよう。
三羽は楽だな、みんな寮だから。
草加たちが記者なので、雑談用の話題にも時事ネタと流行を入れようと四苦八苦。今履歴すげえよ?8割ヤフトピ。出所軽いな!
適齢期だの晩婚化だの寿退社だの言うてますが、今回も差別的要因をあえて取り入れています。ゆ、許してよ!害虫の妄言!
100パボーダレスの文章は、不可能だと思うけど、やっぱね、できるだけその距離縮めたいもんね。害虫!無境界だよ!
あーもー後書きウッザい長い。たぶん日記回復するまでこんな感じの排泄。ゆ、許してよ!害虫の虚言!
次回、あらかた出馬メンバー1周したので、1匹1匹に火ィ入れていく作業、開始します。テンション最高!恋!しちゃい大会!