キャンディ☆キャンパス
8時間目:トランシエントポーター
何年か前に中古で買った、ETC付きの黒ワーゲンは、
保土ヶ谷ICから、第三京浜道路に乗って、
平日下り線の、車密度の少ないアスファルトを、規則的な運転で走る。
運転席に、俺。
後部座席に、撮影用の機材。
そして助手席には、を乗せて。
ホルダーに置かれた、缶コーヒーに手を伸ばすふりをして、
運転中だけれど、隣の姿を盗み見る。
ビルの合間に沈みかけた夕陽が光って、真っ白い肌が照らされ、
シートベルトに固定された細い体が、陶器のように、
は、綺麗だ。
2週間程、北京、上海、そして韓国と、アジアを巡っていた。
離島問題のデモ活動は、俺のようなフリーにとっては大好物の媒体だが、
まさか、こんなにも長引くとは思いも寄らなかった。
大企業の後ろ盾が無いぶん、食うためには撮らなければならないが、
その間、2週間もの顔を見られなかった。
久しぶりに見た、の横顔。
やっぱり、綺麗だ。
「後ろの席、まだ余裕あったね、津田くんも乗せてくれば良かった」
ワーゲンは港北ICを抜け、都築ICへ続く道を走る。
少しだけ後ろを振り返って、空席を確認するの頬に、
もう完全に陽の落ち切った空が、夜の影を残す。
紫色の夜に光る、長い睫毛に彩られた瞳は、今、
隣に居る俺では無く、駅で別れた津田の事を映しているのだろうか。
「津田には悪い事をしたな、今度詫びておくよ」
心にも無い答えを返しながら、ハンドルを握る。
せっかくの2週間ぶりを、あんな若造に邪魔をされては堪らない。
きっと奴は、毎日の、この横顔を、見つめられる距離に居るのだろう。
ここには居ない小柄な後輩に、恨めしさを思う。
「そういえば、克己が居ない間、深町先生から転居葉書あったよ」
深町先生とは、俺たちが中学校の頃の若手教師で、
なぜだか、学年の違う幼馴染みの俺たちを可愛がり、
この歳になった今でも、連絡を取り続けている。
「じゃあ俺にも届いているのかな、帰ったらポストを見てみる」
「うん、新居川崎だから、今度飲もうって」
成人した卒業生と、酒を飲むのが教師の醍醐味だと、
俺たちがまだ14、15の頃から、豪語していた事を思い出す。
物心ついてからずっと、隣同士の家で、
俺の生活サイクルに、の存在は、
常にあるものとして組み込まれていた。
日が沈むまで、自転車に乗って遊びに出かけた、小学校。
夏は、神社の石段に座って、60円のアイスを2人で分けた。
制服に身を包んでも、殆ど毎日一緒に帰った、中学校。
春に、耳年増な同級生に、付き合っているのかとからかわれた。
生まれて初めて学校が別れた、高校。
冬、同じ学校に行きたくて、両親と何度も喧嘩した。
今度こそと、追いかけて入学した大学。そして留学。
秋、新学期の校内での、久々の再開に、手を握り合って喜んだ。
握った手の感触を、今でも忘れていない。
温かく、柔らかく、細くて華奢な、その手指。
その指は今、助手席から手を伸ばし、
ホルダーに置かれた、ジャスミン茶のペットボトルを開けた。
「お茶、買っておいてくれてありがとう、これ好きなんだ」
「別に、何か目に留まったから。試しに買っただけさ」
の好みなど、知らない事は無い。
好きな本、好きな歌、好きな色。
歳を重ねるにつれて、刻々と変化するそれらを、
俺は、呼吸するように感じ取ることが出来る。1つの特技だ。
好きな場所、好きな食べ物、好きな服。
だた1つ、知らないのは。
「、帰り、飲みに行かないか、2人で」
好きな、人。
何かお前ら兄妹みたいだな、どっちかって言うと、如月が兄かな、しっかりしてるから。
中学の頃、深町先生に言われた一言は、今でも俺の足を引く。
幼い頃から、長い間一緒に居すぎたのかも知れない。
兄妹のように、20数年。
運転席と助手席の、
今も、こんなに近い距離に居る。
なのに。
「良いね!久しぶりだし、本社に寄ったら待ち合わせしようか」
きっと俺は、一番近くて、一番遠い。
ワーゲンは玉川ICを降りて、246を北上し、ビルの街に入る。
濃紺の夜は、もう街をすっかりと包み、
両際にはネオンが色とりどりと、正面にはテールランプが赤い。
「なあ、その茶、美味いか?新作だろ」
「うん、今季のアタリだった、飲んでみる?」
運転する俺の手を煩わせまいと、わざわざ蓋を開けて差し出す。
意識されない事は、嫌われるよりも、辛い。
実は飲み物自体には、全く興味は無かったが、
とりあえず、口をつけてみた。
やっぱり、お茶の味しかしなかった。
ね、美味しいでしょうと、淡く色づいた唇が、ネオンに光った。
「ほんとだ、アタリだな。」
赤信号のせいにして、視線を合わせて、そう言った。
永田町あたりで、大規模なテロでも起きてはくれないかと、一瞬本気で考える。
国内のテロ、しかも首都圏なら、確実にと組んで仕事ができるから。
「・・・・だめだ、そうなったらまず避難勧告だもんな」
「え、何が?」
何でも無いよ。
ネオンは繁華街の極彩色から、ビジネス街の白一色に変わっていく。
犇めき合って連なるテールランプは、それぞれの家路を急ぐ。
目的地の、細長く大きなビルが、目前に見えて、すぐ近くで車を停める。
「終わったらメールしてくれ」
わざわざウィンカーをハザードにつけて、
その綺麗な背中が見えなくなるまで、見つめた。
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〜愛と青春の後書き〜
あーあーあー。もう。書きたい事の半分しか書けなかったのはこの害虫の害虫たる所以ですNE☆無意味にポップに。
ラギ!幼馴染みじゃん!はじめちゃん!美雪!もう古い。パクるネタが古い。脳が錆び付いている証拠だ。脳?ねえよもう。
良い仮名が思いつかなかったので、中学時代の恩師の名前をジャンル越境で沈艦から深町先生!たぶん体育。
もうこのキャン☆キャン見切り発車シリーズ、この先どう転ぶかわっかんねえよ。良いか。別に。非営利(以下略)、もう免罪符。
今後もかいじ出身中年ジャニーズからネチネチ引っ張って来ようと画策中です。や、やめて!石を投げないで!痛い!脳が!
今回もヒロインの個性の露出と、ラギの勝手な設定に、嫌われまいか嫌われたか嫌われているのか、ネガティブ三段活用。
黒ワーゲン、缶コーヒー、ジャスミン茶、グロス、そして全てのカギカッコに。ビビりまくって及び腰です。嫌われそうだ!
どこまで個々の設定を書いて良いのか、どこまで想像に頼れば良いのか、そんなんばっか悩んでいるから更新遅いんだ!脳死しろ!あざーす!
ラギ車、最後の方、三茶から246抜けて渋谷に入っているんだけど、実は地理解っているのはその辺くらいからでね。
え?港北IC?都築IC?そんなん資料の丸写しですが何か。夏休みの宿題だよ!溜め込むからだよ!脳死しろ!あざーす!
ラギの1人称と文章構成はリスペクト村上龍。もう大好き。一生好き。半島を出よ、まだ読んでないけど。ファン失格!脳死します。
薄々予想してはいたけど、やっぱダークホースはダークホース。上手い具合に火ィ入ってくれた!あざーす!
お陰でこの後の、各馬に着火していく作業が、少しやり易くなった。少しは更新、早くなるかNA☆きしょい。ポップに。
プロット無しのやり逃げ企画ですが、この瓢箪から駒具合がとても楽しいです。爽やかだよ!人生!爽やかに!脳死しろ!
次回は、ちょ、お前、近い!近いって!ちょっと、離れろ!バナヌでトカゲなピンクパッションです。