キャンディ☆キャンパス
7時限目:サイドバイミー
先輩は、
僕の事を、津田「くん」と、如月先輩を、克己と、呼ぶ。
滝先輩の事も、草加先輩の事も、それぞれ苗字で呼び捨てで、
僕だけ「くん」をつけて呼んでくれる事は、
偉そうだけどほんの少しだけ、優越感でもあったけれど。
如月先輩の事を、先輩は、
克己、と、呼び捨てる。
先輩と、出会ってから10余年。
それでも敵わない。
20余年の、幼馴染みという、壁には。
「津田くん、今なら朝刊間に合うから、バイク便で送ろ」
野次馬も、あらかた静まって、
警察も、だいたいは波を引いて、
混乱は、おおよそ静まって。
さっきまで、頭上をホバリングしていた、TV局ヘリも、
今はもう、その羽音すら聞こえない。
事故現場は制服組の警官たちが、綺麗にその掃除を終えて、
記者の僕らも、取材に幕を促されていた。
「は。ではバイク便、手配します」
携帯のメモリを探りながら、僕は、初めての事故報道に、
先輩たちの足を引っ張る事無く終えられたのだろうか。
隣で僕がバイク便を呼ぶのを待つ、先輩は、
過去、幾度か僕が失敗しても、何も言わず、いつもの優しい顔で、
大丈夫、最初から完璧な人なんていないから、次は成功できる。
滝先輩や如月先輩なら、面と向かって怒鳴るか、気合の一発でも入るだろう。
呼び出し音の鳴る携帯を耳に当てながら、先輩を盗み見る。
傾きかけた陽に、白い頬は、薄くオレンジに染まり、
睫毛の長い横顔が、その頬に影を作っている。
カメラとレコーダーを握った華奢な指。
視線は未だ、現場の方向を見つめていて。
それは綺麗で、凛としていて。
でも。
やっぱり、成功も失敗も、伺えなかった。
「電話ありがとう、何分で来るって?」
「5分で到着です、駅前だから早く行ける、と」
「良かった、他紙とバイクの取り合いになるかと思ったけど」
「携帯が繋がり難かったので、そのようでした」
事故現場から少し離れて、カメラからメモリーカード抜き取って、バイク便を待つ。
そこでやっと、機材を抱えた如月先輩が、駅前に戻ってきた。
事故報道は初めてで、右往左往する僕を置いて、
如月先輩は現場付近の高いビルから、望遠レンズで狙っていたらしい。
こういう所でも、僕は自分が、新人である事を思い知らされる。
「克己、お疲れ様、ロケハンなら津田くん連れてってくれれば良かったのに」
その言葉の後には、事故現場は始めてだから、勉強になるでしょう、と、
続くことは解っているけれど、
「何だ、津田が邪魔だったのか?先に言ってくれれば排除したよ」
僕が想像する最も後ろ向きな考えを、排除、と言う言葉を使って、
如月先輩は、何を考えているのか解らない、冷ややかな視線で僕を見る。
出会ってから数年経ってはいるけれど、
如月先輩の事を、未だ僕は良く読み取れない。
一緒に仕事に当たる、滝先輩や草加先輩もそうだと思う。
如月先輩を、最も良く知っているのは、先輩なのだ。
それは、幼馴染みというラベルを貼って。
「わたしたちはバイク便で本社に送るけど、克己どうする?」
「俺は別便にするよ、血だらけの、良いのが何枚か押さえられたから、
タブロイド誌の方が高く買ってくれると思うし」
如月さんは、港談社に出入りはしているものの、フリージャーナリストだ。
この間はアチェに行ったとか、政治家の談合を押さえたとか、北朝鮮に入ったとか、
さんを通して、その武勇伝を聞く機会は多くあるが、
いつもどこにいるのか、事故や事件があるといつもさんの隣に立つ、
まさに神出鬼没だ。
滝先輩などはあからさまに、
草加先輩は顔には出さないけれどハッキリと、
そして僕も、僭越ではあるけれど、
先輩の隣という立ち位置を、心から望んでいるから。
「津田、バイクが来たぞ、さっさと送るものを出せ」
多少、否、かなり、否、ものすごく。
如月先輩は、要注意人物だ。
大学に入ってすぐ、滝先輩と草加先輩が、
さんを追うようにして、海外留学を決めてしまった。
3人より2年下の僕は、そのときまだ高校生だったけれど、
急いで卒業して、急いで大学に入り、急いでその後を追った。
生き方まで、人の真似をするたちでは無かったけれど、
それでもやっぱり、追いかけたいもの、追いかけてしまうものというのは、存在する。
やっと辿り着いた、日本とは気候の異なる、9月のキャンパスで、
笑って迎えてくれた、滝先輩と草加先輩、そして、先輩。
聞け、津田、のやつ、スキップしたんだぞ、来年で卒業だ。
滝先輩の、喜ばしい、でも僕にとっては痛々しい報告に、
僕は努力しても埋まらない2年の距離に、その時ほど悔しく思った事は無い。
その後、どんなに励んでも、僕に飛び級は無理だったから。
そして、先輩のスキップと同時に、もう一つ、新たな報告があり、
それが、如月先輩だった。
津田くん、紹介するね、彼、克己、如月克己。
小さい頃から隣の家で、小中も一緒で、留学でも偶然、一緒になって。
幼馴染み、って言うのかな。津田くんの1コ上。
よろしくお願いします、津田一馬です、と、礼をした僕に、
如月先輩は、先輩と留学で一緒になった事は、確実に偶然などでは無い事を、
物語るかのような視線を投げた。
幼馴染みが何だ。
僕だって、高校のたった1年間だけれど、先輩と過ごしているのに。
、克己、と呼び合う幼い頃からのその習慣に、
僕と、そしてきっと滝先輩と、草加先輩も、
内心、気が気では無かったのではないだろうか。
その日からずっと、
如月先輩は、要注意人物なのだ。
「、社に戻るのか?乗っていけ、俺は今日、車だから」
重い機材を抱えて、如月先輩はここでも、
要注意人物のレッテルを余すところ無く発揮する。
滝先輩にも草加先輩にも、そして僕にも、
未だに先輩は、車で送られるのを遠慮するが、
なぜだか如月先輩には、その辺りが少しだけ気安いのだ。
「本当?じゃあお世話になろう、津田くんも本社?だったら、」
「悪いが津田、機材を載せたら助手席しか空かないんだ、今回は遠慮しろ」
先輩の優しさを制する形で、あからさまな牽制をかける。
「え?じゃあわたしも電車で帰る、1人で乗るのは、悪い、」
断ろうとする先輩を置いて、
如月先輩は、勝手に駐車場の方へと歩きだしている。
しかも、見張っててくれと言わんばかりに、先輩の足元に、機材を置いて。
これで先輩は、電車で帰る道が、完全に塞がれてしまう形になる。
「・・・・もう、勝手なんだから」
睫毛の長い大きな瞳は、僕にごめんね、の視線を向ける。
少し寂しそうな、申し訳なさそうな、瞳に僕の影が映って。
そんな瞳で、見られてしまえば。
「いえ、せっかくですし、お乗りになって下さい、僕は電車で行きます」
僕に拒否権は無い。
陽は完全に傾き、ビルと駅との並ぶ大通りを、オレンジ色に染めて、
道々には家路に着くスーツと制服、買い物を終えた親子が急ぐ。
「・・・・あ、津田くん、さっき克己が言った事、あれ違うから」
先輩の白い肌が、夕陽に染められてオレンジ色だ。
いつも僕と共に、滝先輩、草加先輩にも掛けられる、透き通った声。
今は、僕だけに話しかけている。
「如月先輩が?何か、言われましたか」
「津田くんが邪魔って言ってたけど、違うからね」
駅前の道路は帰宅の車で混み合っている。
如月先輩の車は、ラッシュに飲まれているのだろう。
「・・・・そうでなければ良いと、思ってました」
「うん、今日は助かったから、津田くんがいてくれて、良かった」
迎えの車、まだ、来ないで欲しい。
できればずっと、来ないで欲しい。
夕陽がオレンジ色で助かった。
僕は今きっと、頬が紅潮している。
いてくれて良かったなんて。
「・・・・嬉しい、です、ありがとうございます」
優しく微笑む目の前の瞳は、
僕がどれだけ努力して、どれだけ嬉しくて、この言葉を返したか、
たぶんきっと、気づいていない。
なぜなら。
「月末、一緒の香港、楽しみだね」
この上僕を、どこまで舞い上がらせたら気が済むのか。
明日の晴天を予告するような、綺麗な夕陽だったけれど、
僕の願いは通じずに、迎えの車はやってきた。
申し訳ない表情で乗り込む先輩と、
何を考えているのか無感の表情で乗り込む如月先輩の、
走り去るテールランプに一礼して、
僕は駅への道を行く。
いてくれて良かった。
どうしよう、僕は今1人、
顔が、笑っているんじゃないだろうか。
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〜後書きだけじゃイヤッ!〜
そりゃ嫌だろう。本文無しで後書きだけじゃ、確実に何言ってるんだこの害虫頭おかしいんじゃねえの。って、バレてるよ。
びっくり!難産!すげえ!生まれた!三つ子だよ!しかも三つ巴だよ!ギネス!ギネス申請!ビールの方!かんぱーい!
頭がおかしいですがそれは皆様ご存知ですね。ね、じゃねえ。ハイ、びっくりするほどの難産です!津田!お前!難産です。
キャン☆キャンは、別作進行中の、君マ!(読んでNE☆CMってる場合じゃねえ)の、未登場キャラを、
試験発射するつもりで新キャラ出馬、見切り発車!JR西!危険なネタだなやめよう。で、ある意味試し書きです。死ね!
で、今回クローズアップ津田。犬!永遠の19歳!永遠のスタンドバイミー!永遠のウォーターボーイズ!違うな。
ですが、まず書き出し。1人称から悩んだ。2日悩んだ。無駄無駄無駄無駄ァ!ジョジョ!スタンド、バイミー!しつこい。
津田の1人称、原作ではわたし、たまに僕、俺とは言わない。でもどれもイマイチしっくりこなくね?
背水の陣で僕ですが、津田の津田による津田らしさを、3割も出せなったと、今割腹。宮城は!どっち!明日は!どっち!
帝国三羽(滝、草加、津田)の、友情破壊防衛線として、如月を、防大三羽を、
防大三羽(角松、菊池、尾栗)の友情破壊防衛線として、帝国三羽、如月を、それぞれ組ませて、三つ巴!
熱いハートがパッションで恋と友情のガラスの天秤泥沼逆ハーだキャッホウ!と、しようとしていたのですが、
如月が意外にも鬼のようなダークホースで、今、世界の秩序が乱されようとしています。やりおるな如月。さすが特務。
2段落から3段落にかけて、2日に分けて書いたので、テンションの差が浮き彫りです。宮城は!あっち!さあ!裂け!腹!
次回、ダークホースが強火で見切り発車。試験発射。ハープーン!試し撃ちしチャイナなよ!チャイナに!如月!