キャンディ☆キャンパス
5時限目:Mr.インクレメント





出会いは高校1年生。
付属中からの持ち上がり進級生が多い中、
見知らぬ、驚くほどの美人が隣に座ったので、
調子に乗って、さっそく声をかけてみた。

「お前、どこ中だ?名前は?」

向き直った美人は、正面から見ても、
やっぱりものすごく美人で、

「態度でかいね、普通、自分から名乗るものじゃないの?」

育ちが良く、家柄も良く、顔も悪くないと自負してた、俺。
自慢じゃないが、女の子に声をかけて、こんな対応をされたのは、
15年間生きてきて、初めてだった。

「・・・・そうか、悪かったな、じゃあ名乗る、俺は滝。付属からだ」

女の子に謝ったのも、そういえば、
15年間生きてきて、初めてだった。
間違いを訂正し、素直に自己紹介した俺に、
その美人は、柔らかく微笑んだ。



俺とこいつとの、出会い。

少し短い、プリーツから覗く、細く白い脚に、
窓からの風に揺れる、柔らかいく艶めいた髪に、
まだ新しい、同じ赤の学年色の上履きに、
禁止されているはずのピアスが、小さく光る耳元に、

運命を感じたのは、
どうやら俺だけだったようで。

その日から10余年。
知り合いは、友達になり、友達は、仲間になり、仲間は、同僚になり。
1センチも縮まらない、2人の距離に、

俺のプライドは、10余年間、
甘く、切なく、景気良く、ずたずただったりする。




******




人気急上昇中の女優だか何だか知らないが、4時間も拘束しやがった。
時間厳守は人としての最低の礼儀では無かったか。
下手なアイドル演技で、首都高の渋滞だと言い訳をしていたが、
明らかに寝起きの目で言われても、信じられる訳が無い。
本当は昼から、企画本部に合流して、
1ヶ月ぶりにと2人で、昼食でも摂ろうと思っていたのに。
時間が押して本社に寄ったせいで、余計なおまけまでついてきやがった。しかも2つも。

今日は厄日だ。仏滅だ。獅子座さん最下位だ。B型ビリだ。

俺の心中のイライラを、気づかないふりをして、
隣を歩く、1つ目の余計なおまけが、更に神経を逆撫でるような事を言う。

「滝、きさま、のんびりしていて良いのか?明日の午前中、取材が入っているだろう」

1つ目の余計なおまけ、草加拓海だ。

付属中学からの腐れ縁で、俺がを紹介したのが運の尽き。
美人の友達を自慢するつもりが、俺より仲良くなりやがった。
さらに俺の真似をして、大学も留学も、就職すら、と同じ道を歩く始末。
俺とが2人きりになるのを、人生かけて邪魔をする気らしい。
今日も、俺が、の好きなケーキ屋の箱を持っているのを、目ざとく見つけて、
用も無いのに企画本部までついてきた。
ケーキは後から買えば良かった。策士策に溺れるとは、まさにこの事。

「きさまこそ、用も無いのについてくるな。花火の企画書、通ってないくせに」

「案ずるな、ディズニーシー新企画は通っている、とのツーマンセルでな」

「は?!シー?!と!」

「部長がどうしてもと言うから、仕方無く、だ」

仕方無く、と言いながら、顔は満面の笑みだ。
こいつはいつもいつも、と一緒の取材の時は、
ヒルズだのシーだのビーナスフォートだの、デートスポットの企画を上げる。
札幌に一泊の出張をした事もあった。2人きりで。腹が立つ。

草加の満面の笑みにつられてか、
その隣を歩く、本日2つ目の余計なおまけも発言する。

「草加先輩、花火の企画書があったんですか?偶然ですね、僕もです」

10余年間、目の上のコブ。津田一馬だ。

草加と一緒だった部活の、2年下。
最初は、礼儀正しい良い後輩だと甘く見ていたが、
草加のやつが間違って、を紹介してしまった。
その日から、あまりに解りやすい好意もあからさまに、
俺のライバルに成り得る器では無いが、の金魚のフンとして、
草加の飼い犬よろしく、10余年間ついて回っている。
今日も、わざわざ仕事を作って持ってきて、
草加と共に、俺との時間に水を差そうとの寸法か。
更に面倒くさい事に、本人に自覚が無いのが、腹が立つ。

「きさまも花火の特集を上げていたのか、7月号?8月か?」

「いえ、6月なんです、香港の端午節に間に合わせようと思って、先輩と」

「!・・・・香港?と?」

「はい、海外の花火特集は新しいと、デスクが押して下さいました」

珍しく草加が驚いた。無論、俺も。
花火なら夜だから1泊だろう。しかも香港。
人数は要らないはずだ、きっとと2人きり。
こいつはいつも、若葉な後輩の顔をして、美味しい所を持っていく。

俺は最近、海外の災害報道ばかり回ってきて、
この前からスマトラ島、キャンベラ、遠くはリオに飛ばされて、
1ヶ月もに会ってない。
その間、こいつら2人は、グルメやデートスポット、劇場のこけら落とし、
事あるごとにと組んで、甘い仕事を掠め取っているらしい。

今日も本当は、の好きな店でケーキを買って、
久々にお茶を、できれば夕食も、2人で過ごしたかったのに。

俺のイライラは頂点に近くなっていたが、
のいるだろう一室、企画本部になっている、第六会議室も、近づいていた。

「滝、その箱の中身は何個だ?」

「俺との分、2個だ!きさまらにやる分は無い!」

「きさまも器が小さい」

草加はことごとく、俺をイラ立たせる計画だろう。
近づいてくる、会議室への扉。
保冷剤が冷たい、ケーキの箱を揺らさないようにしながら、
早く、会いたいと思った。




******




厄日というのは、とことん俺を、どん底に突き落としたいらしい。




プレスのIDカードを首から提げて、校内に入り、
いつも通り、ノックはせずに、第六会議室の扉を開けた。

一番最初に部屋に入る俺に、は、あ、滝!と、
10余年前と少しも変わらない綺麗な顔で名を呼んで、
俺がケーキの箱を差し出せば、
10余年前と少しも変わらない綺麗な笑顔を見せてくれる、

はずだった。

しかし、
厄日というのは、とことん俺を、どん底に突き落としたいらしい。

会議室の扉を開けると、待ち望んだの姿の他に、
見知らぬ3人の学生、否、顔だけは知っていた。
1度写真で見た、が担当する3人の学生の姿が、
さも親しそうに、談笑していた。




「あ、滝!草加と、津田くんも!」

やはりは、春らしい白いシャツに、手入れが行き届きセンスの良い靴、
艶めいて、少し伸びた髪が、今日も綺麗だ。
俺はきっと、笑顔になっていたと思う。
部屋に、新たな3人の姿が無ければ。

3人の学生は、俺と2人が入るなり、
立ち上がって直立不動の、この学校の学生らしい挨拶をした。
津田並に礼儀正しいのは認めるし、八つ当たりだとは解っているが、
と俺との時間を潰す、邪魔な要因である罪は、それでは拭えない。

「草稿で見てるよね、わたしの担当の学生さん、遊びに来てくれたんだ」

無垢な笑顔で紹介するには悪いが、
遊びに来てくれたなどと言われても、今日の俺は良いイメージを持て無い。
わざとぶっきら棒に見えるように、最短の自己紹介と、
わざと不遜に見えるように、片手で3枚の名刺を渡してやった。

「滝だ」

続いて草加が、まるで面倒な取材が始まるかのような慇懃無礼な笑顔で、
最後に津田が、まるで大事な取引先と挨拶するような畏まった丁寧さで、
それぞれ同じ社名の入った紙片を、一人ずつに手渡した。

きっと人生で何度目かだろう名刺交換に、とまどう3人の姿を無視して、
俺はに言葉をかける。
今日はこのために来たのだ。色々障害が多いけど。

「何だ、遊んでいるなら本社に戻れば良いじゃないか」

俺に会いたくは無いのか、俺は会いたくて来たのに、とは、
口の中に仕舞い込んだ。
まさかこの場でそんな事を言えば、余計なおまけ2人を逆撫でるばかりか、
もしかしたら更に3人の、面倒なライバルが増えてしまうかもしれない。

「遊んでないよ、今だって滝の原稿、修正してたんだから」

「俺の?修正?まさか」

「まさかじゃないよ、誤字すごい。パソコン使えば良いのに」

「て・・・・手書きで書く事にこそ、記者として矜持が試されるのだ!」

に小言を言われるのは、2人きりなら嫌いでは無い。
しかし今は、余計な人物が5人も居て、
思わぬ失態を見せることになってしまった。

「新人でパソコンが使えないなど、弾の入らぬ銃だな」

耳ざとく聞いていた草加が、俺との会話に入り込む。

「パソコンなど、日本語が乱れる原因だ!漢字も書けなくなる!」

「きさまは元から漢字に弱いではないか、気にする事は無い」

「どういう意味だ!」

また始まった、とが笑った。

優しい風が窓から入って、の光る髪を揺らし、
かすかな甘い香りが、風下の俺の鼻腔をくすぐる。
厄日、余計なおまけ、見せてしまった失態、完璧に無くなった2人きりの時間。

それでも、

逆光に透けるような、の、柔らかい笑顔に、
先刻までのイライラは完全に姿を消して、
俺は新たな、鼓動の高鳴りと、心の暖まりを感じて、




こんなだから、10余年も、変わらぬ距離の平行線だ。




津田がコーヒーを入れ、カフェインの香りが部屋を埋める。
人数が増えて、少し狭くなった会議室に、
少し開いた窓から、
春の午後の風が薫る。

カレンダーは5月。
春にしては高い気温が、初夏への推移を漂わせ、

今年の夏のビール指数と、
流行るであろうビーチの特集と、
夏にありがちな水難事故の報道を、

どれか1つでも、と組めれば良い、と、思った。




    




〜後書きのから騒ぎ〜GW2時間スペシャル〜

から騒ぎました!さんまもドン引きするくらいの騒ぎっぷり!やっと出せたよライバルまず3人!戦え!競争馬共!
防大三羽に共通のライバルを出して、三羽の友情破壊防止策のストッパー@当て馬になってもらおうと、
本当は沈艦から微笑みの貴公子速水さんを、ジャンル越境で引っ張ってこようと思っていますた、が!(東スポ風
だってもっとモテたいじゃん!イイ男に囲まれたいじゃん!好いた惚れたで腫れられたいじゃん!と、言う事で。
だったら当て馬やめて、マジ出馬させた方が場ぁ沸くんじゃね?数字とれるんじゃね?まさに7年目プロデューサーとりあえず数字。
どうせプロット無しの見切り発車企画、動けるだけ動かして、遊べるだけ遊ぼうぜ!もう自己満の境地じゃねえの!

滝、びっくりする程書き易くて素でまいった。どんな言葉をしゃべらせようか、どんな行動させようか、1ミリも悩まなかった。
実は書くまでは、滝の描写が一番不安で、もう1作の原作リンクジパ夢「君マ!」の滝テスト発射的な思いで今回。
いや、びっくり、書き易いったらありゃしない。筆進む。今度ネタ詰まったらとりあえず滝にしよう。とりあえずビール!枝豆もね!

あれ?気づいて頂けたでしょうか、この連作、サブタイが全部、映画のタイトルパクってパロってるんだけど。あれ?
本文書くより何より、これが1番悩んでいます。今回はねずみとツルんだ電気スタンド映画。インクレディブル!見てないけど。
電気スタンド嫌いじゃよ。ねずみ映画は奴とデキてから衰退した。やっぱ栄光は光学式アナログセル画までだね。温故知新。

現代に近い時間軸で、滝やらその他を出馬させたら、口語が微妙な事態の修羅場を巻き起こしましたが!助けて!
「きさま」「〜なのだ」「〜だろう」なぞ、今誰も言わねえよ。でも話し言葉変えたら別人になったので背水の陣、そのまま。
そして今ちょっと不安なのが、本来大戦中のジャパンに生きてた方々なので、今後発言が右に寄らないか、と。
記者の全てがニュートラルであるべき、なんつーのもまた差別ではありますが、凝固した思想を持つのは反感を買い易い

次回、恋心に火ィ入れる作業をしていきます。もう事務作業に近くなってきた。楽しいよ!人生!