キャンディ☆キャンパス
4時限目〜ストームボーイ
「しっつれーしまーす!」
これが教官室の扉なら、即座にその場で怒鳴られて、
前支えだとか、腕立てだとか、空気椅子だとか、
何かそんな感じの、もう慣れ過ぎた罰則を喰らうところだけれど。
俺がノックも無しに、乱暴にドアを開け、
無礼も極まる、馴れ馴れしい挨拶をしても、
「あ、尾栗くん、いらっしゃい」
5月の陽も温かく、夕方の優しい風がカーテンを揺らす、ここ、第6会議室。
部屋の主、さんは、
5月の陽より暖かく、夕方の風より優しい笑顔で、俺を迎えてくれた。
先月中旬から始まった、1年間もの長期取材。
俺と、洋介、雅行の3人はそれぞれ1回ずつ取材を受けた。
トップバッターの洋介は、学生長の名に恥じない、堂々とした態度で、
アンカーを飾った雅行は、女の子が苦手だから、緊張した態度で、
さんからの取材を受けたらしい。
そして、俺は。
天性の才能か、天は二物を与えたか。ちょっとこれは言いすぎかな。
昔から、人と仲良くなるのが大得意の、恵まれた体質だったから、
特にやる事の無い日の放課後、否、やる事があってもわざと時間を作って、
こうして、さんの居る第6会議室に、遊びに来られる身分になった。
「仕事中?俺、いたら邪魔になるかな」
「ううん、記事まとめてるだけだから大丈夫、どうぞ」
そして、敬語も使わなくて良い身分になった。
こんなに恵まれた才能をありがとう、天に感謝を否めない。
さんは、作業用の長机でなく、応接用のソファで仕事をしていた。
新しそうなノートパソコンを開いて、モニタと書類を交互に眺めている。
俺は、さんに向かい合った席に座って、買ってきたコンビニ袋を応接机に置いた。
「もう、嫌になっちゃう、記事の内容は良いんだけど、誤字脱字が多いったら」
座った俺に、パソコンの画面を見たまま、さんが話しかけてくれる。
まだ出合って1ヶ月も経っていないけれど、
俺が勝手にソファに座っても、例えば変な気を回してお茶を入れたり、
わざわざ仕事の手を止めて気を使って話しかけたりはしない。
さんは、人との距離の取り方が、絶妙だと思う。
「何、防大の記事?さんが書いたやつじゃないの?」
コンビニ袋を開け、中からコーラのペットボトルと、コンソメのチップスターを取り出す。
今日は本当は、ハバネロな気分だっけれど、前に買ってきたときに、
さんは辛いものが苦手と知ったから、2人で食べられるチップスターにしたのだ。
辛いものが苦手なんて。
外見は綺麗なお姉さんなのに、すごく可愛いと思った事は秘密だ。
「この企画って、私の他に担当者4人いるの、その人の分」
「4人?そうなんだ、知らなかった」
よく考えたら、この部屋に置かれている私物は、
さん1人分の物だとすると、多すぎる。
パソコンだけでも3つ、ファイルや写真の束がたくさん、
カメラバッグっぽい物が2つ、コーヒーカップもいくつか重ねられてあった。
しかし、出入りしている所は、見たことが無い。
俺がその理由を聞くと、
さん含む記者の人たちは、防大企画の他にも担当を持っているらしく、
他の仕事が重なった場合は、予定の開いた誰かが来るようになっているそうだ。
俺が部屋に遊びに来て、さんにしか出会わなかったのは偶然か。
そう考えると、何て良い偶然にめぐり合ったものかと思う。
「さんは、他にどんな仕事してんの?ゲーノージン、とかの取材?」
チップスターの袋を開けて、作業中のさんにも、
手を伸ばしやすい位置に置く。
「あはは、尾栗くんの記者のイメージって、芸能なんだ、
でも残念、違うよ。護送車追っかけたり、政治家尾行したり、キナ臭い事ばっかり」
防大の企画担当してる4人も、一緒のチームでね、芸能はいないなあ。
そう言って、さんは、俺が開いたチップスターに手を伸ばした。
貰って良い?もちろん!そのつもりで買ってきたんだ。ありがと。
その、貰って良い?ありがと、の2つの言葉のためだけに、
俺が毎度、コンビニ袋を提げてくる事に、きっとさんは気づいていない。
それにしても、さんは、悉く外見と中身を裏切ると思う。
大人の女の人なのに、辛いものが苦手。
こんなに綺麗で華奢なのに、護送車、政治家、キナ臭い仕事。
それをギャップに感じてしまうのは、俺の偏見なのかな。
チップスターに開くその唇は、今日も薄い桃色で色づいている。
綺麗だよなあ、と。
パソコンを見つめているさんは、
俺がそれを見つめている事に、気づいているのか、いないのか。
もし気づいていたとしたら、俺は視線を無視されている事になるけど、
さんにとって、年下男のこういう視線は、
やっぱり軽くあしらう物でしか無いのかな。
その時、俺の胸ポケットが小さく震えて、
マナーモードにし忘れたauが、高らかに着信を伝えた。
さすがにさんも、突然の電子音に驚いてパソコンから目を離す。
さんの仕事の手を止めてしまった、俺の手回しの悪さ。珍しく反省の念。
「尾栗くん、着信、」
「やべ、すんません、マナーにすんの忘れてた」
「ううん、いいよ、出ちゃって」
さんの寛容すぎる優しさに甘えて、携帯を開く。
着信音で、相手が誰だかはもう解っていた。
小さい四角の液晶に、発信者の名前と番号、それから写メ。
『あ、もしもし、康平?今どこだ?』
洋介だ。
「今?さんとこ」
俺の短い回答に、一瞬だけ電子音が沈黙。
『・・・・またか。お前、そう何度も仕事中に、お邪魔だろ』
「そんな事ねえと思いたいんだけどな、俺、邪魔なんかしてねえし」
俺の弁明と少しの希望を聞いて、会話の流れを察知したのか、
さんが、通話口に聞こえるように発言する。
「尾栗くん、ちっとも邪魔してないよ、大丈夫」
それが本音でも社交辞令でも、身を乗り出して声が届くようにするその姿勢で、
ほんの少しだけ縮まった俺との距離に。
それだけでもう、嬉しくて仕方ねえんだからさ。
「ほら、聞こえたか洋介、あれ?つーか何で電話?」
『頼まれてたヤンジャンと煙草、買って来てやったのに、お前が部屋に居ないから』
「あ!サンキュ!もう帰って来たんだ、早いな」
『喫煙所に居るなら届けようかとも思ったんだが・・・・』
「ああ、いいよ、ありがと、そこら辺に置いといて」
そこで、さんが、また仕事の手を止めて。
洋介にとっては、もったいなく恐縮な、
雅行にとっては、ハードル高く緊張を強いる、
俺にとっては、ありがたく優しい、効果絶大な一言をかけてくれた。
さっきのように、距離を縮めて。
「角松くんもおいでよ、賑やかになって楽しいし、全然邪魔じゃないから」
他人から見れば、明らかに仕事の邪魔をしている俺を、
フォローするための発言な事は、俺にだって解りきっている。
でも、それでも。
そんな優しさを見せられると、こんな年下男は、
それだけでもう、嬉しくて、嬉しくて、仕方ねえんだよ。
1、2分の問答の末、洋介は雅行を連れてこの部屋に来る事になった。
あの腰の重い、奥手な雅行を、どう説得するのかが見物だ。
「賑やかなのも、人との会話も、好きなんだ、
仕事しながらでも、全然別の会話できるって特技だし、遠慮いらないよ」
洋介と、たぶん雅行も来るだろう事になって、
書類まみれの机を少しだけ片付けながら、さんが笑った。
その笑顔に、何故か、
少しだけ、悔しく思った。
これから来るのは、親友とも言える2人。
本もお菓子も気持ちも思い出も、全部分け合ってきた2人。
その2人への、さんの招待は、嬉しい以外の何物でも無いはずなのに。
なのに、何で俺は。
悔しい、に似た気持ち、心がイライラして、熱くなる。
小さな嵐に似ている。
熱帯の、暖かいけれど荒れた風。
別に、良いはずなのに。
さんと2人っきりじゃなくなったって。
別に、俺とさんは、何でも無いし。
これが彼女との時間とかだったら、恨めしいとも思うけど。
別に、さんは仕事してるだけだし。
別に。
10分後。
俺が頼んだ買い物を、コンビニ袋に下げて、洋介が、
朝も読んでいた文字の小さい文庫本を持って、雅行が。
教官室の扉を開くかのような、ノックと挨拶で、入室してきたとき。
「いらっしゃい、丁寧だね、もう普通に入って来て良いのに」
笑ったさんに続いて、
「おー、すっげ雅行も来たんだ、奇跡じゃん!」
からかったつもりの俺の顔が、ちゃんと笑えていたか、少しだけ不安になった。
2人分加算された厳つい男の体重で、少しだけ軋んだ応接ソファ。
パーティー開きされたチップスターに伸びる、
黒く日焼けして骨ばった指と、白く華奢な指。
「あ、人数増えたからコーヒー入れようか、みんなコーヒー飲めたよね?」
2人きりの時間は、優しい一言で、ゆっくりとみんなの時間になった。
5月の暖かい風が、優しくカーテンを揺らす。
春にしては汗ばむ陽気。
カレンダーは、もう初夏に移り変わる。
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〜後書き100%〜
もう何をパロってんだかわっかんねえよ後書きタイトル。今ジャンプで最もアレなマンガ、いちご100%だよ。
尾栗はプリキュア☆マックスハート!にギアチェンしたかったのだが・・・・本懐叶わず、切腹。宮城はどちらですか?
そろそろ恋心に火ィ入れないと、いつまでたっても終わんねーよ、とネガティーブに愚痴ってたのですが、
あれ、今気づいた、これ、終わらせる気ねえよ。イザコザ未完のまま手ぇ引きたいよ。何だそれ。柴門ふみ?イザコザ作家?
ああ、林真理子でもアリかな。もしくはアレね、橋田寿賀子。とりあえずフインキ匂わせてフィードバックですか!?ごめんなさい。
そしてヒロインの発言数が、すげえ多い。駄目だ、ネガティブだ、鬱になる。
毎度毎度、お客様に嫌われまいと必死にもがき続ける欲の海ですが。今回は殊更ネガティーブ。どうしよう。
これ、書き終わってアップまで約40分悩んでるからねかれこれ。本当にごめんなさい。許して下さい。切腹。宮城?あっち?
次はやっと、出したかったキャラ出せます!え?誰?うん、アレよ、今回伏線張ったアレ。
ヒロイン以外の、4名の記者達。4名?お前、オリキャラ出す属性の害虫ではないよね?じゃあ誰?
防大に4人も主要キャラいなくない?そう、そこはパロと言う名の免罪符!イエス!キリストもびっくり仰天!臭い!お前臭い!
4+3で7人もイザコザ!?良いんだもうこのシリーズはプロット無しの見切り発車だから。JR西?やべ、危険なネタだなやめよう。
プロット無しで書く作業が、こんなにキッツいと思わなんだが!妄想力でカバーだろその辺は!マンパワー!それ労働力。