キャンディ☆キャンパス
2時限目〜横須賀キャッツアイ〜





夕陽に揺れる、少し茶色の長い髪。
耳元に、時々きらりと光るピアス。
綺麗な身体のラインを見せる、白いシャツ。
右手に下げた、ミスタードーナツの中箱。
彼女の存在を示す全ては、この学内において異質の極で。

一言で言うと、浮いていたのだ。




洋介から、本の企画と記者さんの話を聞いたのが、ついさっき。
1年間も密着取材される事に、雅行はかなり面倒臭がっていたが、
逆に俺は、興味深くその話を聞いた。

「本の主役、1年間も!やった、かっこいいじゃん」

俺は注目される事は大好きだし、主役なんて言葉も大好きだから、
雅行と共に、1年間の協力学生に任命された事は、大手を振って喜べた。

「・・・・面倒だな、洋介の指名だから引き受けるが、課業に支障は無いんだろうな」

雅行は何でこういうのを嫌がるんだろう。ラッキーな事のに。

差し当たって、今月近々にされる初めての取材(何て良い響きだ!)のため、
今日の放課後に、その担当記者さんが挨拶に来てくれるらしく、
4学年にもなれば、放課後のクラブ活動も下級生の指導以外、殆どやる事が無いので、
俺たち3人は、夕日の眩しい放課後の教室で、件の記者の訪れを待っていた。

「良いのか洋介、本来なら俺たちが伺うべきだろう」

雅行が文庫本から顔を上げて、不安そうに洋介に問う。
そう言えばそうだ。これから来る記者は、たぶん俺たちより年上だろう。
例え取材を受ける身でも、防大生には目上を重んじる儒教の教えが染み付いている。

「いや、俺もそう提言したんだが断られたんだ、構内に慣れたいからって」

壁の時計は、約束の時間まであと10分弱を指している。

「な、3分で戻ってくるから、ちょっと、イイ?」

俺が中指と人差し指を立てて、口の近くに寄せるジェスチャーをすると、
洋介が呆れるような、雅行が汚いものを見るような(酷いな)視線を送り返した。
授業が終わってからずっと、洋介の話を聞いていて、そういえば忘れていたのだ。
ニコチンの存在を。
それは思い出してしまうと耐え難く、喫煙者にとっては一種拷問に近い禁断症状だ。

「駄目に決まっているだろう、煙草ぐらい、耐えろ」

「無理言うなよ雅行!お前にとっての本が、俺にとっての煙草なの!耐えられるか?」

「・・・・屁理屈ばかり上達して。駄目なものは駄目だ!約束まであと10分も無いんだぞ」

「だから3分で戻るって、すぐだよすぐ!」

眼鏡の下で、雅行の犯罪者を見るような目が、より一層光る。
雅行に限ってでは無いが、嫌煙者は喫煙者を、まるで汚物扱いする節がある。
昨今の禁煙ブームは、喫煙者を差別し、重税を吸い、その存在を全否定する。
絶対にそんな事は在り得ないけれど、例えば書籍が、世界で排除されるブームが来たら、
雅行は一体どうするんだろう。自殺未遂とか、するかもしれない。
そういう風に考えられないのだろうか、目の前の活字中毒者は。

だが、そこで洋介の鶴の一声が、俺と雅行の問答を分けた。

「・・・・仕方ないな、時間までに絶対戻って来い」

洋介も、喫煙者なのだ。




背中で雅行が何やら不平を申し立てていたが、
聞く耳を持たず、俺は最寄の屋内喫煙スペースに飛び出した。
きっと今頃、洋介は雅行の説教を俺の代わりに聞いているだろう。
記者が来る頃までには、鎮火していれば良い。
そんな事を考えながら愛煙ラークに火をつけた。

その時、窓の外に、この防大の構内には、
異質すぎる存在を発見したのだ。

夕陽に揺れる、少し茶色の長い髪。
耳元に、時々きらりと光るピアス。
綺麗な身体のラインを見せる、白いシャツ。
右手に下げた、ミスタードーナツの中箱。
地図らしい白い紙を見て、構内の案内表示を、せわしく見回している。

俺は煙を目いっぱい吸い込んで、まだ3センチ以上残るそれを煙缶に揉み消した。
喫煙者とは、例え吸い込んだ煙が煙草の1センチに満たなくても、
火をつけて吐き出すだけで、大体がチャージできてしまうものらしい。
雅行みたいに、読み出したら止まらない活字中毒者とは違う。
それだけでも喫煙者には、もっと権利が広がるべきだと思うんだけどなあ。

タイムリミットの3分間まで、あと2分。
道案内の善行をする時間くらいは、残されている。
俺は外に出て、その異質の存在に近づいた。




「こんにちは!迷子でありますか?」

良く考えたら、この言葉は、大変失礼であったかもしれない。
俺は洋介や雅行と違って、こういう時に上手い言葉が出てこなく、
思ったことをすぐに口にしてしまう癖がある。

しかし、俺の非礼を意に介さず、異質の存在はゆっくりと俺を振り返った。

そして俺は、更に無礼にも、絶句してしまったのだ。




長い髪を揺らして、振り返ったそれは、
細い体、細い首の上に、驚くほど綺麗な顔が乗っていた。
長い睫毛、夕陽を受けてオレンジ色に光る大きな瞳、真っ白い肌。
近づいて解ったが、長身の俺に目線が平行になるくらい、背が高い。
普段、日焼けした肌の、力強い存在ばかりを目にしているせいか、
いざ対峙したこの異質な存在は、俺の目には、
1枚の写真のように映った。

だがそれは、当然写真などでは無く、

「ええ、迷子です、防大の敷地面積を甘く見ていました」

照れたように笑ったその笑顔は、確かに俺から2歩の距離にある実像だった。
また、他の女性に比べてかなり近い高さから発せられた声は、優しく、美しかった。

「地図を頂いているんだけど、現在地がわからなくなっちゃって、ここは何号館?」

別に俺には地図を見せなくても良いのに、その白い紙が俺にも見えるように、距離を詰める。
目に入ったのは、プリントされた地図だったが、
頭に入ったのは、シャンプーのような香りだった。
そんな甘い香りなんて、もう何年も味わってないことを思い出して、
心臓が、少しだけ鼓動を早めた。

「この赤い印のついている所に行きたいんですけど」

甘い香りを頭から追い出す。

「ええと・・・・1号館ですか?ここですよ?」

それは目の前にある、さっき俺が飛び出してきた建物。
俺を見つめるオレンジ色に照らされた瞳が、驚いて丸くなった。

「・・・・なんだ、着いていたんですね、良かった」

ほっとしたように、ありがとうございますと笑った顔が、夕陽に映えた。




そして俺は、はたと気づく。
彼女の胸元に掛かった『港談PRESS』のIDカードに。

「・・・・あの、もしかして、学生長に会う、記者さんでありますか?」

「え?うそ、もしかして、ご紹介いただく予定の学生さん?」




偶然とは斯くの如し。

記者さんを伴って教室に入った俺を、
驚いた目でみた洋介と雅行の顔が、すげー、おもしろかった。




******




差し入れに何を持っていったら良いか解らなかったので、
基本を押さえて甘味にしましたと、ミスドの箱を開けて、彼女、サンは言った。
本の取材を受ける自体、初めての俺たちに、基本を押さえられても無意味だが、
俺にとっては嬉しい差し入れだった。
俺は、目立つ事と主人公と言う単語の次に、甘いものも大好きだから。

取材は早速、明日から始まるらしい。
少なくとも1年間はご協力頂く事になるので、できるだけ仲良くさせてね。
仕事をする大人の女の人の顔で、微笑んだ視線を受けて、
洋介は任せておけとでも言いたげな堂々とした表情で、
雅行はいつもの殆ど解らない無感に近い表情で、それぞれ答えた。
俺はもちろん、可能な限り親近感を沸かせるような、明るい笑顔だ。
なにしろ1年後には、1冊の本の主人公になれる。嬉しさと楽しさが込み上げる。

そして俺は、人と仲良くなるのも大得意なのだ。
この特技をよく、洋介は褒めて、雅行は大した事無いと切り捨てるが、
俺はこれを、我ながら1つの才能だと思っている。
雅行なんかは、人見知りが激しいから、僻んでいるだけなのだ。たぶん。

初めて触れ合う記者と言う職業にも、綺麗な大人の女の人にも、
俺は臆すること無く、直ぐに打ち解けられる自信がある。

1年間も、こんな綺麗な人に取材してもらえるなんて、大ラッキーじゃねえの。




貰ったドーナツの箱から、チョコレートの輪を取り出して頬ばり、
今後の予定を説明する、夕陽に照らされたな横顔を、
眺めた。




洋介、雅行、悪いけど俺が。

主人公だぜ。




    




〜ドキッ☆後書きだらけの水泳大会!〜

未だエンジンが始動しません。全然ローギア。早くオーバートップに入れてキャッホウ☆キャッホウしたいのに。
とか言いつつ、尾栗の一人称で書いちゃうあたり、もう何か、見え透いている。お前駄目だよ!やめちまえよ!ウス!

尾栗と菊池、メンチ切れさすの楽しくて仕方ない。もうブチブチいくよ。掴みかかって殴り合ってくんないかな。
場合によってはタイマン張ってガチバトっても良い。それくらい、楽しくて仕方ない。ろくブルの読みすぎです。イエス。
あと尾栗の煙草の銘柄で、またもや30分くらいタイピング止まったよ。ラーク、で、良いよね?あれ?未だもやもや。

この回くらいから、三羽の設定オリジの臭いがプンプンしてきた。臭い!臭いよお前!死ね!死んでしまえよ!ごめんなさい
今回主役の尾栗は、喫煙者、甘いもの好き、目立つの好き。菊池、活字中毒の短気。角松も喫煙者。
だって公式設定本、どっこ探しても無えんだもんよ。ブクロのジュンクでも無かった。廃刊なの?あれ。
この先更に勝手な設定が増えていきそうだ。既存キャラにしろヒロインにしろ、勝手な設定を作るのはすげーネガティブ。怖い。
嫌われないかな、想像壊さないかな、独りよがりになんないかな、展開読まれないかな。もう害虫の隷属精神です。

次回は菊池にしようかな。あ、やっぱやめ、角松先に書いちゃおうかな。ヒロイン主人公にしようかな。お前もう駄目だよ。うん。