キャンディ☆キャンパス
11時限目:フルブックスジャケット





あれは、事故だ。




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初夏の夕方は、読書に最適だ、と個人的に俺は思う。
読書の秋とは誰が言い出したのか、秋はスポーツの秋だ。
というか、年中スポーツだ。この学校に居れば。
年間通して運動漬けの俺には、行事と行事の隙間の、
初夏が、一番読書に適している。

読書において、食わず嫌いはしない。
時代物、ノンフィクション、古典、エッセイ、ドイツ文学、
とりあえず興味が沸いたものを片っ端から読み進める。
この事を康平には活字中毒、だとか揶揄されるが、
あいつは煙草で脳が萎縮して、本が読めないのを僻んでいるのだ。たぶん。

興味のあるジャンルは、度々移り変わる。
ベンチャー企業の若手社長が、球界に参入するニュースが流れていた、去年の冬。
投資に関心は無いけれど、経済、殊に証券関連を、読み漁った。
日本にも世界にも、地震や津波、自然災害が蔓延した、今年の初春。
何かの役に立つ日が来ると、民間災害対策や自然科学を、読み耽った。
海軍や海自、自衛隊を舞台にした、映画の製作ラッシュが興った、ついこの間。
何となく自分に近い気がして、映画の原作になった小説と、関連書籍に、読み入った。

そして最近の興味は。




開け放たれた窓から、海から吹き込む初夏の風に乗って、
遠い車のエンジン音、カッター練習をする2学年の威勢の良い声、ツバメの囀りが、
静かな図書館の空気に響く。

一之瀬泰造の、地雷を踏んだらサヨウナラ、
ジェイソンバークの、ビンラディンと国際テロネットワーク、
香山リカの、ネット王子とケータイ姫、
露木茂の、マス・コミュニケーション論。

借りていた4冊は、1週間で読み終わってしまった。
このペースで読むと、図書館データベースの「菊池雅行」履歴が、
そのうちパンクするぞ、と康平がいつか笑っていたが、そんな事は無い。
俺はこれでも、ゆっくり読んでいるのだから。

読み終わった4冊を返却カウンターに戻して、
見繕って来た新たな4冊を、貸し出しカウンターへと提出する。

興味のあるジャンルは、度々移り変わる。
今回借りた4冊は。




外への扉を開けると、涼しい夕方の海風が、襟元を掠めた。
今日はどれから読み始めようか。薄いのからが良いかな。
借りたばかりの書籍のタイトルを、頭の中で反芻しながら、
石畳の階段を降りた。

その時。

「菊池く、」




背後から俺を呼ぶ声を、
ここまでは、聞き取った。
誰の声なのかも、解った。
しかし、俺が振り向いた時には。

「・・・・う、わ、!」




階段の、最上段から、落ちてくる衝撃。
突然視界に広がる、シャツのパステル、艶やかな茶。
大量の書籍と書類が、頭上から降り注ぐ。
俺の肩に、胸に、腕に、細くて華奢な体が打ち当たり。

最後に。




唇と唇が、ぶつかった。




******




「ごめんなさい!大丈夫?怪我してない?本当に、」

俺はその細い体に、まるで押し倒されるような形で、さんと衝突した。
地面一面に散らばった、書籍、書類を気にする前に、
焦りと戸惑いが混じった、申し訳ない表情で、さんは俺を気遣って。

唇の感触が、忘れられないまま、
漸く俺は自分を取り戻した。

「いえ、自分は、大丈夫です、」

それしか言えなかったけれど。




ごめんなさい、と、もう1度謝って、さんは急いで体を起こした。
急速に衝突して、急速に離れて行った、その小さな体温。
俺はまた、自分を見失ってしまいそうだったから、とりあえずは深く考えないようにして、
起き上がって、散らばった紙束拾いを手伝う。

「本当、ごめんね、怪我とか、大丈夫?」

本や紙を拾い集めながら、さんは申し訳なさそうに言うが、
俺たちは基本的に、前支えや空気椅子と共に生活している。
年中スポーツは強制だし、非公式だが殴られてもいる。

「は、大丈夫です、大して痛くありませんから」

声が裏返りそうになるのを、必死で制して答えた。




大学の歴史に関して書くために、図書館蔵書を利用する予定だったらしい。
しかし、関連書籍をあれもこれもと積み重ねていくうちに、

「思ったより大量で、ここの蔵書量は素晴らしいね」

そして、自分の腕力も過信したらしい。
これくらいなら持てるだろうと、積み重なった書籍を持ち上げたが、

「やっぱり調子に乗るのは良くなかった、本の重さを甘く見てました」

抱えた本の影で、階段の存在を忘れたまま、俺を見つけたのだそうだ。

会議室までは自分が運びますから、と、
俺は遠慮するさんから、重なった本と紙の束を、
奪い取るようにして受け取った。
再びどこかで転ばれても困るし、第一こんな細い腕で、会議室まで何時間かかるんだ。

受け取ったそれは、一体どこが重いのか。
俺がいつも振り回す、M1より軽いじゃないか。
女の人と言うのは、皆こうも非力なものなのだろうか。

本の山は片手で抱えられて、会議室へは5分と掛からなかった。
ありがとう、と、綺麗な声で、丁寧にお礼を言う、さんの。




薄く色づいた唇に。
俺の唇は、思い出す。

あれは、事故だ。




「・・・・失礼しました!」

挨拶もそこそこに、会議室から、逃げるように飛び出す。
腕に4冊の本を抱えて、廊下を走り抜け、階段を飛び降り、建物を出る。
そのまま学生舎まで、全力疾走。
部屋に飛び込み、後ろ手にドアを叩き閉めた。

こんな距離で、息が切れるはずは無いのに、
心拍数と、体温が、まるでフルマラソンの後だ。




あれは、事故だ。単なる。
ぶつかっただけだ。何を動揺する事がある。
意識する方がおかしい。相手に失礼だ。
あれは、事故だ。

事故なのに。




興味のあるジャンルは、度々移り変わる。
今回借りた、その4冊は。

秋岡伸彦の、現代ジャーナリズム論、
宮島茂樹の、負傷宮島の一見必撮、
ロバートホワイティングの、東京アウトサイダーズ、
伊藤寿男の、編集者ほど面白い仕事はない。

解り易すぎる、最近の興味。

何て俺は、単純だ。




それを頭から追い出そうと、本のページを捲ってみても、
目が、文字を追わない。脳が、意味を解さない。
頭の中に回るのは、ぶつかった華奢な肩、白い腕、柔らかい肌。

そして、唇。

前回と同じく、1週間で読み切るつもりだった、4冊。
一体、いつまでかかるんだ。




    




〜後書きであります!サー、イエッサー!〜

BETA☆BETA!もうベタすぎる!ベタ大好き!全ベ連の末端担うよ!(全世界ベタな展開大好き連合)。常任理事はボーイズビー。古い。

一度やってみたかったんだよねコレ。朝さあ、遅刻しちゃーう☆とかってパンくわえて走ってたらさあ、曲がり角でさあ、
キャッ☆ドン☆痛い☆みたいなさあ、どこ見てんだよっとか言われてさあ、カッコイイ男の子でさあ、転校生だったりするの。
あーもーベタだ。すごい今満足。充実感で煮えくり返る。リスペクトエヴァンゲリオン。誰派?害虫?もちリツコさんじゃん?

菊池の節操無い活字中毒っぷり。ハリポタから浅田次郎、ダニエルキイスまで何でも読むじゃん?活字!ジャンキーだね菊池!
借りた本は害虫という身分で恐れ多いですが、できるだけ読んだ事あるやつを載せたかったんだけど、イマイチ。未読ある。
ここの図書館に香山リカがあるか、甚だ不安でなりません。たぶん無いだろうな。やべ、また地雷にオウンゴールか?ゴール!
審判!レッド出せよ!レッドデータアニマル!絶滅の危機!害虫!このまま消えちゃいな!サッカーブームに便乗、しきれてない。

これを書いて、前書いた「津田の1人称」に、何で悩んでたか、やっと気づいた。遅すぎるブルーミン。脳が花盛りです。
菊池を含む三羽の1人称は「俺」か、この大学らしさが出るかと「自分」に固定しようとしてたんだけどね。
そういえば津田も「自分」と属性の軍人目軍人科学名軍人でしたね。そうかそれか。もう遅い。津田は「僕」。しもべと読む。あれ?

やべ、冷静になれ!落ち着け!よく考えろ!菊池、ヒロインとチッス、しちゃっ、たの?あれ?これチッスに入る?入らないよね?
やべえよ、これがチッスに入るならヒロインと7人出馬チッスビンゴ開始しなきゃじゃん!まだ早いよ!大人になりなさい!はい!
これはチッスにカウントしません。まだまだ胡乱に引っ張る。どんだけ貧乏?恥を知れ!しれ!しね!死ね!4段活用!あざーす!

次回、吹き荒れろスカの乱気流。三代目総長尾栗さんがヘッドで集会開くってよ!まじっすか!